京大,世界最速の逆項間交差を示す有機ELを開発

京都大学の研究グループは,有機分子において,極めて速い逆項間交差(reverse intersystem crossing,RISC)を実現できる分子設計指針の構築に成功した。また,この新たな設計指針に基づき,TpAT-tFFOと名付けた,優れた新規分子を開発することにも成功した(ニュースリリース)。

有機ELデバイス内では電気が励起子に変換され,その励起子が様々な色を放つ光になる。励起子には,一重項(S1)と三重項(T1)の2種が生成される。通常の蛍光材料では,光に変換できるのはS1のみで,その後,いわゆるりん光を用いて,T1から光への変換も可能となったが,そのためにはイリジウム等の希少元素が必須だった。

これらの問題に対し,熱活性化遅延蛍光(TADF)材料が開発された。TADF材料は,T1から一度S1を経由させ発光を得る。T1からS1への遷移は逆項間交差(RISC)と呼ばれ,2010年前後に得ることが可能となった。しかし,RISCの遷移はスピン反転を伴う必要があるため,その速度は他の競合する過程と比較して遅いという課題があった。

研究では,重原子効果を用いず,軽元素のみからなる有機分子において,RISCを高速化する分子設計指針を確立するとともに,それを実証することに成功した。今回得られた逆項間交差の速度定数は,このような軽原子で構成されているすべての有機材料系の中で,107s−1(1秒間に1000万回)を超える世界最高値となった。

さらに,この分子設計指針を実証するため,この指針に基づく「TpAT-tFFO」と名付けた新たな分子を設計した。この分子は,固体膜では,酸素によらず高い発光を示す一方で,溶液中では,発光効率が酸素に極めて鋭敏という特長を有する。酸素があればほとんど光らず酸素がなければ良く光るという極めて高い選択性があるため,酸素センサーとしての応用も期待されるという。

今後,有機ELの屋外用途では特に高輝度が必要となる。そのためには,低輝度域では高い効率を発揮していても,高輝度域では効率の低下が起こるという問題を解決する必要がある。また,有機EL素子の寿命も長くすることも求められる。

今回実現した高速なRISCを輻射緩和の速い発光分子と組み合わせたり,また,高速なRISCと高速な輻射緩和を両立できるような新たな分子を今後開発することにより,T1励起子の迅速な光への変換が,ひいては,高輝度域での効率向上が可能となる。また,有機EL素子の長寿命化といった実用面にも,今後大きく寄与するとしている。

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