矢野経済研究所は,5G関連デバイス世界市場を調査し,参入企業各社の動向,将来展望などを明らかにした(ニュースリリース)。
そこでは,5G関連デバイス(回路・基板,主要部品・デバイス,材料・評価システム)を合算した2020年の世界市場規模(メーカー出荷金額ベース)を11兆889億円と予測した。
5G仕様に対するニーズは現在,Wi-Fiやセルラーネットワークを活用したスマートメーターやスマート農業,工場などでのIoT(Internet of the Things)化や,小売業や流通業などでのRFIDによる自動化,LoRa WANを活用したさまざまな産業へのアプローチなど,すでにアプリケーション,テクノロジーのいずれの軸においても拡大しつつあるという。
5G普及の初期には,主に3~6GHzの周波数帯を用いたサービスが展開される。これらの周波数帯では他の無線システムなどの存在により,5Gで利用可能な帯域幅が限定されるため,通信速度もその帯域幅に応じた限界が存在する。
こうしたことから,国内では既に28GHz帯の割り当てが予定されていることに加え,39GHz帯,60GHz帯などでも2020年代を通して順次5Gによるシステムが構築されていく見通しだとする。
5Gの登場によってダウンロード速度は高速化し,待ち時間は減少することが予想される。しかし,5Gが登場してしばらくすると,ネットワークに接続されている多数のIoT機器を完全には処理できなくなる可能性が高いとみる。
これは,今後登場するさまざまな分野のIoT製品によって,IoT環境を実現するネットワークがより一層複雑になり,データ需要が大幅に増加するようになればネットワークへの負担が急激に増大することになるからだとする。
そのため,早急にBeyond 5G実現に向けて動き始める必要があり,世界中の研究機関やネットワークベンダーでは,すでにBeyond 5Gに向けた技術開発を始めている。国際電気通信連合(ITU)においても,2030年のBeyond 5Gネットワーク実現に向けた技術研究グループの構築がすでに始まっているという。
国内のワーキンググループでは,テラヘルツ帯の利用,伝送速度が100Gb/s以上(5Gの10倍),遅延は1msec未満でほぼゼロ遅延,接続密度が1,000万台/km2が目安とされている。
5G市場に戻ると,2030年の5G関連デバイス世界市場規模(メーカー出荷金額ベース)を69兆5,930億円と予測する。5Gサービスの本格展開が見込まれた2020年は,新型コロナウイルスの影響を受けたことで設備投資の遅れが見込まれるものの,一方で新しい生活様式にマッチした新たなサービスの提供に5Gが活かせる可能性が十分にあり,大手通信キャリアが率先して模索を始めているという。
従って,今後の市場に対しては設備投資の遅れというマイナス要因と新たな活用展開というプラス要因の両面が考えられるものの,2022年予測までは新型コロナウイルスの影響がみられるとしている。