島津製作所は,光学顕微鏡を搭載し,世界最高クラスの分析速度とイメージング性能を併せ持ち,液体クロマトグラフ質量分析計としても使えるイメージング質量顕微鏡「iMScope QT」を,6月9日に国内外で発売する(ニュースリリース)。
イメージング質量顕微鏡とは,質量顕微プローブと光学顕微鏡を併せ持つ質量分析計。「顕微鏡による画像」と「質量分析計で取得できる成分分布情報」を合わせて解析することで,微小領域において対象成分の分布を可視化できる。
例えば,光学顕微鏡でがんの患部を観察して,質量分析計で調べた抗がん剤の定量情報と組み合わせれば,がん部に抗がん剤が適切に届いているのかどうかが確認できる。
速く高精度な質量分析イメージング技術に対する世界的な需要は,創薬・医学を中心に農業や食品分野などでも伸びてきた。新製品は,このような期待に応えるものとなる。
この製品は高精度ステージと高安定紫外レーザーおよび四重極飛行時間型(Q-TOF型)質量分析計の採用により,世界最高水準の空間分解能5umと,従来比で3倍の質量分解能および5倍のイメージング画像取得速度を実現した。例えば,従来4時間かかっていたマウス脳切片全体(14mm×7mm,分解能20umピッチ)のイメージングが,この製品では50分程度に短縮できる。
質量分析計部と顕微鏡部はユーザー自身での着脱が可能。顕微鏡部を取り外し,液体クロマトグラフを装着することにより,Q-TOF型の液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-9030」システムとしても使うことができる。「LCMS-9030」を既に持っている場合は,顕微鏡部を購入するばイメージング質量顕微鏡として使用できる。
また,同じく6月9日にイメージング質量顕微鏡の前処理工程「マトリックス塗布」を自動化する,イメージング質量分析用スプレー装置「iMLayer AERO」を発売する。この装置を使用することで従来の手作業で生じていた塗布ムラが抑えられ,再現性の高い分析結果が得られるという。
同社は質量分析イメージングを用いた研究開発において,前処理から分析,解析までを高い技術と性能でカバーし最先端研究を支援していくとしている。