東京工業大学の研究グループは,透明領域の超短パルス光を用いたコヒーレント光学フォノンの量子状態を制御する理論モデルを構築し,さらにダイヤモンドを用いた実験を行ない,光干渉とフォノン干渉の実験結果を再現することに成功した(ニュースリリース)。
励起光パルス対の時間間隔を変化させることで,発生するコヒーレント光学フォノンの量子状態を制御することができる。この現象については,振動準位を2準位,電子準位を2準位の合計4準位レベルの理論モデルにより,十分に励起光パルス対が離れている場合の光と物質の相互作用に関して,フォノンの生成・制御・計測過程まで含めた計算が行なわれている。
研究グループが新たに構築した理論モデルでは,励起光パルスの重なった時間領域に発現する現象も含めて取り扱うことができる。また,照射する光パルス波形及び光干渉を計測しておき,複数のガウス関数型パルス波形でその波形を再現することで,パルスチャープまで含めた任意の光パルス波形を取り扱うことが可能となった。
構築した理論モデルを検証するため,ダイヤモンドに対して10fs以下のパルス幅をもつ近赤外光を用いた時間分解透過光強度測定を行なった。励起光パルスを,高精度干渉計を用いて時間差が制御された光パルス対としてダイヤモンドに照射することで,ダイヤモンドコヒーレント光学フォノンの量子状態を制御し,観測光パルスの透過率変化を計測したところ,得られた透過率変化においても光干渉及びフォノン干渉が観察された。
この実験結果は構築した理論モデルから計算される結果と良く一致しており,透明領域における光学フォノンのコヒーレント制御について新たに構築した理論モデルは,ダイヤモンドに対する取り扱いが可能であることを確認した。
今回,新たに構築した理論モデルによって,ダイヤモンドのコヒーレント光学フォノンの量子状態制御を,励起パルス対の重なった時間領域に発現する光干渉も含めて取り扱うことができた。
今後,ダイヤモンドのような広いバンドギャップを持つ材料に対して計測・制御することにより,対象とする物質固有の光学フォノン生成・制御・計測過程といった光学特性を明らかにすることができるとしている。