青山学院大学の研究グループは,高性能なp型半導体である一酸化錫(SnO)薄膜の合成方法を確立し,p型電導機構を解明した(ニュースリリース)。
さまざまな高精細表示素子や大容量記憶素子に応用されている酸化物半導体薄膜のほとんどは,n型と呼ばれる半導体となる。しかし,近年,p-n接合と呼ばれる半導体デバイスの構造構築が酸化物薄膜の積層のみで可能になり,新しいデバイスの創出が期待できるため,例外的な存在であるp型の酸化物半導体薄膜に関する研究が活発になってきた。
研究グループではドイツのフラウンホーファーFEP(有機エレクトロニクス・電子ビーム・プラズマ技術研究所)との研究で,反応性スパッタリングという機能性化合物薄膜合成法に超高速でのin-situフィードバックシステムを適用することに成功し,多くのn型酸化物薄膜の高速合成法を確立してきた。
この合成方法では,さまざまな化合物の化学量論組成比を広い範囲で精密に制御することが可能となる。
酸化錫は非常に興味深い物質で,最も安定な二酸化錫(SnO2)は顕著なn型の特性を示すが,一酸化錫(SnO)は二次元的な層状の結晶構造を持ち,p型の特性を示す。
前述の合成プロセスにさらに工夫を重ねることで,今回,p型,n型両方の高性能な酸化錫薄膜を連続的に合成し,それらの薄膜の構造解析や電子状態解析に成功したとしている。