ナイトライド・セミコンダクターは,不織布マスクへの深紫外線LED照射に於ける不織布マスクの粒子捕集性能劣化について,粒子捕集性能の劣化がほぼ認められないことを確認した(ニュースリリース)。
同社はこれまで,この製品を用いて,10分未満での229Eコロナウイルスを不活化することを実証しているが,今回,インフルエンザウイルスを噴霧した空気をマスクに通過させ,通過後の空中浮遊粒子の中の活性インフルエンザウイルスの量と通過してくる空中浮遊粒子の物理的粒子の粒子径ごとの濃度を測定し,マスク素材の評価を実施した。
別の実験では,N95マスク,続いてサージカルマスクの順でアルコール消毒での性能劣化が大きく,一方UVランプ式消毒装置の照射では,アルコール消毒より性能劣化は少ないものの,サージカルマスクの方がN95マスクよりも性能劣化が大きいという結果が出ている。
今回,波長275nmの深紫外線LED照射では,N95マスク,サージカルマスクのいずれにおいても,40分間の照射では捕集率が照射前と比較して,ほぼ同じだった。N95マスクは200分間の照射後に於いても99.959%と,粒子捕集性能の劣化がほぼ認められないことを確認した。
理由として,アルコールは,特にN95マスクに於いて不織布の繊維同士のプレス結合を著しく弱めるため,繊維同士の間隔を一定に保つことができなくなり,フィルター機能が大きく低下することが考えられるという。また,UVライトは,260nm付近の紫外線が不織布の静電気等の分子間力を弱めるために,粒子捕集メカニズムが低下すると推測されるとした。
一方で,深紫外線LEDの照射は,光出力で比較すると,10cmの照射距離に於ける20WのUVランプの照度0.000026W/cm2に対し,同社製品搭載の深紫外線LEDの照度は0.0000013W/cm2なので,UVランプの20分の1に相当するという。
別の研究では,紫外線の光エネルギーが120Jに達するとマスクがダメージを受けるとされているが,同社製品の光エネルギーが120Jに達するためには約3年かかる。
また,深紫外線LEDが少ない光エネルギーで高い不活化効果を持つのは,光の指向性及びスペクトルによる有効紫外線量が影響していると推測する。UVランプが光が全周に出て,かつ他の波長の光も含むが,深紫外線LEDは照射角120度内に照射され,単一スペクトルなので,ウイルス内のRNA塩基に効率的に吸収されるだけでなく,発熱量も少ないので,不織布へのダメージが少ないという。