北大ら,光でインプラント炎症に効くナノ複合体開発

北海道大学と名城大学は,インプラント周囲炎治療への応用を目指した光応答性ナノ複合体を開発した(ニュースリリース)。

歯科インプラントは欠損歯に対する治療法として広く普及しつつある。一方で,インプラント周囲組織に細菌感染が進行すると,インプラント体と周囲骨組織との結合が失われ,インプラント体の脱落を引き起こすインプラント周囲炎が深刻な問題となっている。

インプラント周囲炎に対する治療法は十分に確立されておらず,一般的にはインプラント体の清掃,表面の滑沢化,抗菌薬の局所投与などが行なわれている。しかし,インプラント体表面は微細な構造を有するため,その表面に一旦炎症が及ぶと,バイオフィルムを完全に除去することが困難となっている。また,抗菌薬の全身投与では副作用が危惧される。そのため,効果的な治療法の開発が急務となっている。

カーボンナノホーン(CNH)は,生体適合性が高く,様々な薬物を内部に包接できる構造をしている炭素ナノ材料。また,近赤外光は組織透過性が高いことで知られており,CNHは近赤外光をよく吸収するという特徴がある。研究グループではこれまで,CNHを用いたインプラント材料などの研究開発を行ない,骨との適合性が高いことを報告してきた。

CNHの上記のような特長を利用して,抗菌薬であるミノサイクリン(MC)と複合し,近赤外光による抗菌作用増強を図った。しかしながら,CNHとMCは強固に結合しているため,近赤外光を照射しても抗菌作用には変化がなかった。

そこで,医療分野で幅広く利用されているヒアルロン酸(HA)と CNHを複合化し,MCを担持させた MC/HA/CNHを開発した。このMC/HA/CNHにインプラント周囲炎の原因菌の一つであるA.a菌を播種し,近赤外光を照射した後の細菌生存率をMC単独の場合と比較しその有効性を検討した。

その結果,MC/HA/CNHの細菌生存率は近赤外光非照射下では約40%であり,MC単独(0.5mg/mL 相当濃度)とほぼ同等だった。しかし,近赤外光照射では生残細菌は検出されず,抗菌効果が大幅に増強されたことが確認された。

さらに,MC/HA/CNHを48時間透析した後でも,近赤外光照射下では生残細菌は検出されなかった。これらの結果から,近赤外光照射によりCNHの光熱効果が引き起こされるとともに,CNH表面のHAからMC放出が促進され抗菌作用が増強されることが示された。

研究グループは,この光応答性ナノ複合体は,今後のインプラント周囲炎治療やインプラント治療の発展に貢献することが期待されるとしている。

キーワード:

関連記事

  • 阪大など、藻類の新たな光利用の仕組みをクライオ電子顕微鏡で解明

    大阪大学、大阪公立大学、チェコ  南ボヘミア大学、伊 ピサ大学は、クライオ電子顕微鏡法により真正眼点藻Trachydiscus minutusの光合成アンテナrVCPの立体構造を2.4Åの高分解能で解明した(ニ…

    2026.03.03
  • 立教大と東大、金量子ニードルで近赤外光を高輝度な可視光へ変換することに成功

    立教大学と東京大学は、42個の金(Au)原子からなる異方的な形状を持つ金クラスター超原子である「Au量子ニードル」を増感剤として用いることで、エネルギーの低い近赤外(NIR)光を高輝度な可視光(黄色・橙色)へと変換する「…

    2026.02.19
  • 大阪公立大、陸上生物で初めて近赤外光を感知するトンボを発見

    大阪公立大学の研究グループは、昆虫の中でも特に多くのオプシン遺伝子を持つトンボに着目し、トンボの赤色視を担うオプシンを同定し、その一部を人工的に改変して解析した結果、トンボの赤オプシンが赤色光を感知する仕組みは、ヒトを含…

    2026.02.05
  • 芝浦工大など、不可視光を可視化する有機結晶材料を開発

    芝浦工業大学、早稲田大学、東京科学大学は、人の目には見えない紫外光や近赤外光を、色として可視化できる新しい有機結晶材料を開発した(ニュースリリース)。 不可視光である紫外光(<400nm)や近赤外光(>800nm)は、エ…

    2026.01.29
  • 佐賀大学など、陶磁器釉薬の近赤外発光メカニズムを解明

    佐賀大学と佐賀県窯業技術センターは、陶磁器の釉薬に由来する近赤外領域(880nm付近)の発光が釉薬の主原料である長石に含まれるネオジムに由来することを発見した(ニュースリリース)。 釉薬は「うわぐすり」ともよばれ、陶磁器…

    2026.01.13

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア