名大ら,近赤外光で植物の細胞核を見る技術を開発

著者: 梅村 舞香

名古屋大学と米カーネギー研究所は,植物の細胞核が近赤外波長域の自家蛍光を示すことを発見し,その自家蛍光が植物光受容体フィトクロムタンパク質に由来することを見出した(ニュースリリース)。

核の観察では,DNAに結合する染色色素が広く使用されているが,これらの色素の多くは生きた植物細胞の中に入ることができず,生細胞での観察には使えなかった。

また,蛍光タンパク質を利用する方法は,形質転換などの遺伝子操作を必要とするため,遺伝子操作手法が確立されていない植物種では実用的ではなかった。そこで,近赤外光による自家蛍光を利用した細胞核のイメージング技術が登場してきた。

研究グループは,シロイヌナズナの根を近赤外光(640nm~)で励起したところ,細胞の中に丸い構造体がくっきりと観察できることを偶然発見した。そこで,その構造体が何かを特定するため,核蛍光マーカーのヒストンH2B-mCloverと一緒に観察したところ,蛍光を発する場所が一致したことから,構造体が細胞核であることを見出した。

次に,実験植物のタマネギ,タバコ培養細胞を用いたところ,近赤外光照射により細胞核が観察できた。さらに,実験植物以外の植物の根でも,近赤外光による自家蛍光を利用した細胞核のイメージングができることを実証した。

しかしながら,ヒメツリガネゴケやほうれん草など,葉緑体や色素体などの自家蛍光を発する細胞小器官が多い細胞では,自家蛍光によって核とそれ以外の細胞小器官とを判別することが困難だった。そこで,蛍光寿命イメージングを試み,核とそれ以外の細胞小器の蛍光寿命の違いを検出することにより,両者を自家蛍光で区別することに成功した。

酵母や動物細胞では,核の近赤外自家蛍光が観察されないことから,自家蛍光の原因は植物由来の分子やタンパク質ではないかと推測した。植物の光受容体フィトクロムが685nmの蛍光極大をもつことが広く知られていたため,この偶然の一致からフィトクロムが関与している可能性を探った。

シロイヌナズナのフィトクロム遺伝子PHYAとPHYBを欠損している変異体を用い,近赤外光による自家蛍光を観察したところ,phyA;phyB変異体では,野生型で検出される近赤外光照射による核の自家蛍光が消失していた。

このことから,近赤外光により観察された核の自家蛍光は,核に局在する光受容体フィトクロムから発する蛍光であることが明らかとなった。

研究グループは,核は遺伝子発現や細胞分裂に関わることから,まだ研究が進んでいない農作物などの核研究への応用が期待される成果だとしている。

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