生理研ら,超解像二光子顕微鏡を開発

生理学研究所,北海道大学,東北大学は,全パルス光源・タイムゲート検出系を駆使した独自の超解像二光子顕微鏡の開発に成功した(ニュースリリース)。

二光子励起顕微鏡法は,三次元的な広がりを持つ神経回路網や,その回路網を伝搬する神経活動などを生体脳内で観察することを可能としてきたが,対物レンズの開⼝数と⼆光⼦励起波⻑によって規定される励起光の回折広がりにより,300nm程度でしかイメージングできず,シナプス後部(樹状突起スパイン)の微細な形態変化を可視化するのは難しい。

これを打破するため,二光子励起STED顕微鏡法を用いることで生体脳内のスパイン形態の時空間ダイナミクスをナノスケールで可視化したという報告がいくつかあったが,高度で複雑な光源系・光学系を構築する必要があり,広く一般化された技術とは言い難い状況だった。

研究グループは,超解像技術の黎明期より独自の光技術を統合し,コンパクトかつ低侵襲的な超解像二光子励起STED顕微鏡の開発を進めてきた。

その空間分解能は従来の二光子励起顕微鏡の約5倍,70nmに達したが,脳組織スライスなど比較的厚みのあるサンプルでは,STED光照射に起因するバックグラウンドシグナルの上昇により空間分解能が顕著に劣化するといった問題があった。

この研究では,蛍光光子をサブナノ秒の精度でタイムゲート検出するためのシステムを新たに導入し,二光子励起はもちろんSTEDにもパルスレーザー光源を採用した二光子励起ゲートSTED顕微鏡を世界に先駆けて開発することに成功した。

全パルス光源系を用いることで観察対象への光照射を極限まで削ぎ落としSTED顕微鏡法でしばしば問題となる光ダメージの影響を抑えること,蛍光光子のタイムゲート検出により空間分解能の劣化に繋がる生体分子由来のバックグラウンドシグナルを除去すること,の両方を同時に実現することができた。

特に脳組織イメージングにおけるタイムゲート検出の効果はこれまで考えられてきた以上に大きく,ゲート検出範囲の最適化により従来の二光子STED像に比べてさらに約1.4倍も高い空間分解能でマウス固定脳スライスにおけるスパインの微細形態を可視化できることを見出した。

研究グループは,実際の生体深部観察へと展開するには,組織による光学収差を補償する技術や,明るい蛍光プローブの選定・開発,多色化なども重要だとしている。今後は,生きたまま,ありのままで,体の中を電子顕微鏡のように観察できる「生体ナノイメージング」を目指して,1つ1つの課題をクリアしていきたいとしている。

キーワード:

関連記事

  • 【GW読書におすすめ】身近な光技術を感じる書籍「ひも解くひかり 身近なひかり」

    連休中、少しゆっくりとした時間を過ごしてみてはいかがだろうか。青い空、鏡に映る自分、写真、通信、生命の営み――私たちの身の回りには、あらゆるところに光がある。日常では当たり前に受け止めている現象も、その背後には反射、屈折…

    2026.05.02
  • 神戸賞で、理研・宮脇 敦史氏が大賞を受賞 蛍光タンパク質の開発を評価

    中谷財団は、財団設立40周年を記念して創設した学術賞「神戸賞」における第3回受賞者の決定し、理化学研究所の宮脇敦史氏が「光と生命との相互作用の探究から革新するバイオイメージング」の研究で大賞を受賞した(ニュースリリース)…

    2026.04.21
  • 東大、細胞内の構造と微粒子の動きを同時観察する顕微鏡を開発

    東京大学の研究グループは、前方散乱光と後方散乱光を同時に定量する「双方向定量散乱顕微鏡」を開発した(ニュースリリース)。 ラベルフリー顕微鏡として広く用いられる定量位相顕微鏡(QPM)は、試料の屈折率分布に起因する前方散…

    2025.11.28
  • 筑波大,神経細胞の構造を10倍の精度で3次元計測

    筑波大学の研究グループは,神経細胞の微細構造を高速かつ高精度に3次元計測する技術を開発した(ニュースリリース)。 脳は一つの神経細胞,またはシナプス結合を基本単位として構成され,それらの形態や構成要素の変化が情報処理の基…

    2025.09.17
  • 阪大ら,時間決定型クライオ光学顕微鏡法を開発

    大阪大学と京都府立医科大学は,光学顕微鏡で観察中の細胞を,任意のタイミングかつミリ秒レベルの時間精度で凍結固定し,そのまま詳細に観察できる技術「時間決定型クライオ光学顕微鏡法」の開発に成功した(ニュースリリース)。 細胞…

    2025.08.27

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア