名大,赤外分光でキウイの軟化過程を高精度に評価

名古屋大学の研究グループは,近赤外飛行時間分光法に基づいて,硬さが異なるキウイフルーツ内部の光吸収と散乱の違いを調べ,キウイフルーツの貯蔵中の軟化過程を非破壊かつ高精度で評価することに成功した(ニュースリリース)。

SDGsでは,食料サプライチェーン全体における収穫後の損失を減少させる目標が掲げられている。収穫された青果物は,限られた栄養分の蓄積を使って様々な生命活動を続けながら,鮮度低下あるいは品質劣化と呼ばれる生理的反応の変化が起こるため,品質保持技術の適用が求められる。

しかし,青果物は種類が非常に多く,それぞれの特性が多様であるため,全ての青果物にあてはまる貯蔵条件は存在しない。さらに,貯蔵(追熟)中におけるキウイフルーツや洋ナシなどの外見はほとんど変化せず,外観の「鮮度」が内部の品質(例えば,硬度,糖度など)を必ずしも反映していない課題もある。

したがって,適切な品質を保証するためには,内部品質評価技術の開発が必要不可欠。現在,果実硬度計やBrix屈折計等は使われているが,どちらも破壊的な手法であり,測定に時間と手間がかかるのが難点だった。

非破壊かつ迅速な品質評価手法で,熟度および鮮度を客観的に数値化することによって最適な貯蔵条件の確立だけでなく,顧客のニーズに応じた商品も提供できるようになる。さらに,果物収穫後鮮度劣化メカニズムの解明や,鮮度の個別追跡管理によってフードロス削減効果も期待できる。

今回研究グループは,飛行時間分光法によって硬さが異なるキウイフルーツ内部の光吸収と散乱の違いを調べた。その結果,波長846nm近赤外光の吸収係数はほぼ一定だったが,試料間固有の光散乱特徴が見られた。

さらに,実験データに機械学習を適用することで,キウイフルーツの貯蔵中の軟化過程を非破壊かつ高精度で評価することができた。

研究グループは,今後,試料に照射した点光源の空間分布から多波長の吸収・散乱特性を同時に取得できる携帯型光学系を考案・設計し,非破壊・高精度な品質予測アルゴリズムを提案していく予定だという。

更なる研究により,これまでのスペクトル解析では障害となっていた光散乱を情報因子として扱い,多波長領域の吸収情報と散乱情報に分離して把握できれば,ロバストな硬度予測モデルの構築をはじめ,今まで達成できなかった複雑な鮮度劣化の評価も可能になる。

これにより,青果物の最適な貯蔵条件(温度,湿度,ガス環境など)の設定や,安定した品質を提供するための技術構築,鮮度の個別追跡管理によってフードロス削減などの効果が期待できるとしている。

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