阪大ら,CNTのテラヘルツ励起子の挙動を解明

大阪大学,米ライス大学,米 南イリノイ大学,シンガポール 南洋理工大学,オーストリア ウィーン工科大学,カナダ アルバータ大学の研究グループは,テラヘルツ波と極めて高純度なカーボンナノチューブ(CNT)を利用して,CNT内の準粒子が強い電界のもとでどのように相互作用しているか,その複雑な高速過程を解明した(ニュースリリース)。

半導体CNT中では,光励起により主にエキシトンとよばれる準粒子(固体の観測可能な現象を記述するために使用される理論粒子)が生成されるが,それらは電流を運ばない。電界を印加した状態で,どのように電流を運ぶのか,その高速なキャリアの動きは不明だった。

低次元材料におけるエキシトンは一般に大きな力で束縛されているためその解離は難しく,光電子デバイス開発には不向きと考えられていたが,最近の研究で,非常に弱い電界でも解離していることが示され,高い移動度を持ちながら非常に高い効率で光励起キャリアを発生させることができる可能性が示唆されるようになってきた。

このような物性の解明に向けて,準粒子が1次元(1D)システムでどのように動作し,相互作用するかを理解することが重要となる。これには,高純度なCNTサンプルと,超高速でその挙動を観測することが可能な測定技術,およびシリコンなどの従来の3D材料と比較して根本的に異なるモデルの開発が必要だった。

研究グループは,ライス大学の研究グループが独自開発した真空濾過法を使用してウエハーオーダーでほぼ完璧に配向のそろったCNT薄膜を利用することにより,このステップへの突破口を開いた。

これらは,ウェアラブルオプトエレクトロニクス用途のフレキシブル基板を含む,事実上あらゆる種類の表面および材料に転写可能であるため,テラヘルツエミッターとして広く利用されている光伝導アンテナと組み合わせることで,THz放射と光電流生成の測定を可能とした。

また,研究グループは,ボルツマン輸送および散乱方程式への新しい数値計算に基づいた理論シミュレーションを行なった。

これは,励起子の複雑な散乱工程や現実的なバンド構造,分散関係を加味したモデルであり,励起子の解離の背後にある微視的なメカニズム,印加電場における自由キャリアのダイナミクス,および異なる準粒子間の変換メカニズムなどの詳細な議論が可能となった。

これらの実験より,2つの主要なメカニズムを特定し,CNTの強電界における準粒子相互作用を記述することに成功した。これらの成果は,特に,励起子とキャリアの超高速ダイナミクスの解明や高効率で光励起キャリアを発生させるプロセスの開拓につながるとしている。

その他関連ニュース

  • 京大,サブテラヘルツ帯電波伝搬シミュレータを開発 2024年05月15日
  • 理研ら,異次元ナノ半導体界面に潜む量子光源を発見 2024年04月12日
  • ドコモら,サブテラヘルツ帯デバイスで100Gb/s伝送 2024年04月11日
  • 岐阜大ら,屋外設置型テラヘルツ通信装置を開発 2024年03月04日
  • キーサイト,テラヘルツ帯の試験サービスを提供 2024年02月20日
  • NTTら,300GHz帯フェーズドアレイ送信機を開発 2024年02月19日
  • 東大,電子とテラヘルツ電磁波の強結合状態を実現 2024年02月14日
  • 阪大ら,テラヘルツで世界最高の無線通信速度を達成 2024年02月01日