大阪大学,奈良女子大学,パナソニックの研究グループは,抗体医薬品に紫外線(UV)照射を行なうことで,タンパク質を構成するアミノ酸の一種であるヒスチジンが構造変換されるメカニズムを明らかにした(ニュースリリース)。
これまでにも紫外線を照射するとタンパク質が分解されることやアミノ酸が他のアミノ酸に変わることは知られており,光照射は,微生物の殺菌などの目的で使用されてきた。
特に,従来の光源よりエネルギーの強いUVCランプは,より効率的な殺菌・消毒の方法として,医薬品製造の場での利用が期待されているが,抗体医薬品にUVCを照射した際の,アミノ酸の構造変化メカニズムは,明確に解明されていなかった。
今回,研究グループは,抗体医薬品にUVCを照射し,質量分析法(分子をイオン化させ,質量(m)を電荷数(z)で割ったm/zに応じてイオンを分離・検出する方法)と同位体標識された水(18O水)を用いて実験を行なうことにより,ヒスチジンがアスパラギン及びアスパラギン酸へと構造変換されるメカニズムを解明した。これにより,UVC照射を抗体医薬品の製造の場で利用する際の影響が明確となった。
研究グループは,さらにUVC照射を用いた研究を進めることにより,UVC照射によるウイルスの不活化などへの応用が期待されるとしている。