東北大,アモルファスシリコンを液体から直接作製

著者: higa

東北大学の研究グループは,「静電浮遊法」を用いて,液体シリコン(Si)を充分に過冷却させた状態を実現し,これを固化することによってアモルファスSiができることを見出した(ニュースリリース)。

研究グループは,静電気を用いて試料を浮遊保持する「静電浮遊法」を用いて過冷却液体Siの研究を行なってきた。この装置を用い,0秒で試料加熱を中断すると液体Siの温度が下がり始め,約6.7秒後に固化が始まる。固化の際には大量の熱(潜熱)が出るために,温度が急激に上昇する。温度が上昇する過程を詳細に観察すると,これまで観察されたことのない温度変化が見られた。

τ1で固化がはじまると 温度は結晶Siの融点(τ4:1410℃)まで上昇するが,その途中の約1207℃において数10ミリ秒の間(τ2~τ3),温度上昇が止まることが分かった。これは温度上昇を妨げる吸熱現象が生じていることを示す。

研究グループは,1207℃という温度が理論的に予測されたアモルファスSiの融点に対応することに着目し,吸熱現象は,「固化と同時にアモルファスSiが生成し,それが1207℃で溶けた」ために起きると考えた。

研究グループは,まず,固化と同時にアモルファスSiが生成したことを確かめるために,固化の際に発生する潜熱を除去するための装置を開発した。液体Siの温度が融点から300℃以上下がった時点で試料を落下させ,ソレノイドによって高速駆動された2個の銅ハンマーによって挟み込み液滴を急冷する。透過電子顕微鏡を用いて観察した結果,数µmサイズのアモルファスSiができていることが分かった。

試料中心部にアモルファスと結晶が混在しており,アモルファスの割合は10%程度。固化の際に発生する潜熱を除去できていないために,ハンマーで試料を挟み込んだ後に試料温度が上昇し,いちどは形成されたアモルファスSiが結晶化したと考えられるという。

アモルファスSiは,通常,気相成長法を用いて作製される。工業的にはモノシランガス中でグロー放電を発生させることにより,アモルファスSiの薄膜が生産されている。この研究では,液体Siの温度を融点から300℃以上下げれば,そこからアモルファスSiが形成されることが分かった。

この研究で用いた試料作製方法では,固化の際に発生する潜熱を取り切れないために,試料中のアモルファスの割合は1割未満にとどまっている。しかし過冷却液体Siを用いれば,そこから直接アモルファスSiが得られたという事実の意義は大きく,これからの材料開発の指針となるとしている。

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