遺伝研ら,VRを魚に見せて脳の働きを研究

著者: higa

国立遺伝学研究所,スイス フリードリッヒミーシャ生物医学研究所の研究グループは,ゼブラフィッシュの成魚にビデオを見せて,バーチャルリアリティ(VR,仮想現実)世界を「泳がせる」ことで,行動と脳の働きの関係を調べる研究を実現した(ニュースリリース)。

小型熱帯魚ゼブラフィッシュは,脊椎動物のさまざまな行動を司る脳神経回路の働きを研究するために,さかんに用いられてきた。特に,生きているゼブラフィッシュの稚魚を寒天などで固定して,視覚刺激をあたえ非侵襲的にカルシウムイメージングで脳の神経活動を解析する研究はとても有力で,この研究グループを含む世界中の研究グループでさかんに行なわれてきた。

だが,ゼブラフィッシュの稚魚では解析対象となる行動が比較的単純なものに限られてしまう。一方,ゼブラフィッシュの成魚は学習行動や社会性行動など,稚魚よりもはるかに複雑な行動をすることから,その複雑な行動を研究対象にすることができる。

しかし,生きている成魚を固定して,行動と脳神経活動を同時に解析する方法はなかった。ゼブラフィッシュの成魚にビデオを見せ,VR世界で行動させる(遊泳させる)ことができれば,そのような研究が可能になる。

研究グループは,生きているゼブラフィッシュの成魚の頭部を固定し,ビデオを見せ,胴体や尾部の動きをモニターして,その動きをビデオ画像にフィードバックすることで,ゼブラフィッシュをVR空間(水中)において行動させる(遊泳させる)システムの開発に成功した。

ゼブラフィッシュは自由遊泳時に仲間のゼブラフィッシュを見ると寄っていくが,VR空間においても,その行動を再現することができた。また,固定された状態の生きているゼブラフィッシュの脳神経細胞の活動を,二光子励起顕微鏡を用いたカルシウムイメージングにより解析することに成功した。

このシステムを用いて,ゼブラフィッシュをVR空間において行動させ,遊泳行動の方向と違う方向に動く映像のビデオを見せることにより,「撹乱(予想外の出来事)」に反応する脳神経細胞(群)を見出した。

記憶・学習等の複雑な行動,自閉症等社会性をともなう行動および認知症等脳機能に関係する脳神経回路の働きを,モデル脊椎動物のゼブラフィッシュを用いて解析することができる新しい道が拓かれたという。また,今後これらの現象の脳神経細胞レベル,遺伝子レベルでの研究に貢献するとしている。

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