位相差フィルターなどを手掛けるカラーリンク・ジャパンは,超薄型のヘッドマウントディスプレー(HMD)用光学系を開発し,VRモジュールを試作した。
VRやARの実用化への期待が高まる中,その表示デバイスであるHMDの装着性が大きな問題となっている。一般的に大きな箱型の形状であるHMDは,顔に直接ディスプレー周囲のフレームを押し付ける必要がある。また,ディスプレーと光学系を目の前で支えるためにヘッドバンドを使用する場合も多いことから,メイクの崩れや髪形の乱れの原因となるとして,特に女性から敬遠されることも多い。
同社は光学素子メーカーとして長年培ってきた光学設計の技術,特に光路をコンパクトに折りたたむ技術を応用し,従来大手メーカーの製品で20mm~26mm程度あった表示パネルを含むHMDの接眼部分のモジュールの厚さを,約1/2である12mm(直径44mm)とすることに成功した。また,プラスチックレンズを使用することで軽量化も同時に達成している。
この小型・軽量なモジュールにより,眼鏡のように掛ける小型・軽量のHMDの実現が期待できる。顔に直接触れる部分が大きく減ることからメイクに影響せず,ヘッドバンドも無くなることで髪型を乱すことも無い。また,ピント調節機構を備えているので,視力が悪くても裸眼で映像がはっきりと見える。
試作したモジュールは,0.5インチのHMD用OLEDパネル(解像度1600×1200)用いて,2m先に80インチの映像が見るように設計した(視野角56°)。表示用パネルに特に指定は無く,開発や用途に適したものを使えるという。記者が試したところ映像の解像度は良好で,周囲を覆うフレームが無くても没入感を得られるように感じられた。
このモジュールによりスタイリッシュなデザインのHMDが可能となる。同社は「来る5G時代において,VRをより多くの方に広めたい」(担当者)としており,HMD市場に新たな風を吹き込みたい考えだ。また既にこの製品について,大手HMDメーカーと交渉を進めているという。