千葉大学発ベンチャーのスペクトラ・クエスト・ラボ(SQL)は,光とレーザーの科学技術フェア(11月12日~14日 科学技術館)において,独自の波長可変光源と波長可変フィルターを用いた可視・共鳴ラマンイメージングシステムの展示を行なっている。
光源である波長可変半導体レーザーは転置リットマン方式による独自のもの(千葉大で特許取得済)で,可変領域の端から端まで比較的フラットな強度でASEノイズの無いレーザー光を発振できる。
そのレーザー光を増幅する半導体光増幅器,及び広帯域な波長変換装置(460nm – 550nm)も独自開発品で,それをラマン分光の励起光源として使う事を想定している。
その励起光(レーザー光)を分析対象の物質に照射し,得られたラマン散乱光を受光する際に重要になるのは,励起光と微弱ラマン信号を分離できる高消光比,急峻,高効率なエッジフィルタであるが,励起光に合わせて,フィルターもチューナブルである必要がある。
同社のチューナブルフィルターはその要求を満たすものとなっている(60dBの消光比,500cm-1の急峻性,挿入損失3dB)。この様な波長可変の励起光とフィルターを組み合わせることで微小ラマン信号を共鳴的に増大させる共鳴ラマン計測が可能となり,表面増強ラマン(SERS)などと組み合わせた単分子のラマンイメージングや,MoS2やグラフェンなどナノ薄膜のラマンイメージングを高効率で行なうことが可能となる。
また,同社は平成28年に新技術開発助成の支援(1500万円)によりコヒーレントラマンイメージング用の近赤帯域の高繰り返し高ピーク強度ピコ秒波長可変半導体レーザーを開発した。
上記ピコ秒レーザと広帯域波長変換装置により可視光帯域でも高強度な波長可変光源を得ることが可能であり,共鳴ラマンのみならず,可視域でのCARS/SRSコヒーレントラマンイメージングへの応用が期待されるとしている。