トヨコーと光産業創成大学院大学が国内標準化に向けた取り組みを進めていた「レーザー照射処理面の除せい(錆)度測定方法」が10月21日,日本産業規格(JIS)として制定,公示された(ニュースリリース)。
国内では高度経済成長期に多数建設された橋梁や鉄塔などの大型鋼構造物の老朽化が進み,適切な維持管理による延命が求められている。
構造物鋼材表面のさびや劣化した塗装,汚れなどを除去し再塗装することで構造物を延命できるが,再塗装後の腐食を防止するためには処理面の除せい度が重要となる。
現在,除せいの現場では,研削材を高速のエアーで噴射してさびなどを落とすブラスト工法が主流で,その評価基準として「素地調整用ブラスト処理面の試験および評価方法」がJISとして制定されている。
一方両者は,レーザーを照射し構造物鋼材表面のさびなどに加え,さびの原因となる塩分も除去できる「レーザー工法」を共同で開発した。これは,作業による産業廃棄物の発生を抑えられる上,狭く入り組んだ構造物の処理も容易な新しい処理工法となる。
両者は新工法による除せい度を客観的に評価できる測定方法を国内標準化するため,日本規格協会が組織した原案作成委員会に加わり,レーザー照射試験や照射後の新しい評価手法の提案,その実証試験の実施,JIS本文および解説の執筆を行なうなど,中心的な役割を果たしてきた。
今回,レーザーでさびなどを除去した後の構造物鋼材表面の除せい度を測定する方法として,処理面の状態を色見本と比較する簡易な「目視法」と,光電色彩計で処理面の色彩を定量的に測定する「色彩計法」がJISとして制定された。
レーザーを利用したこの工法の除せい度を客観的に評価できる測定方法が国内標準化されたことで,市場での信頼性を高めることができ,新工法の利用拡大につながると期待されるとしている。
両者は今後,この測定方法の国際標準化に向けた準備とともに,処理方法のJIS化を目指した取り組みを進めていく。
なお,今回のJIS制定には,既存の規格では適切な評価が難しい技術や製品について,新たに国際標準またはJISを制定しようとする際,従来の業界団体による原案作成を経ずに迅速な規格原案の作成などが可能となるよう,2014年に経済産業省が創設した「新市場創造型標準化制度」を活用したという。