電通大,磁場で量子化した固体電子エネルギーを決定

電気通信大学の研究グループは,磁場によって量子化される固体電子のエネルギーを初めて厳密に求めることに成功した(ニュースリリース)。

磁場は物理学のみならず,自然科学において極めて基本的で重要な存在だが,身近な存在であるはずの磁場は,量子の世界では未だ解明されない多くの謎を生み出しており,「磁石を金属に近づけるとどうなる?」という質問ですら,量子論に基づいて正確に答えることは,長らく困難とされてきた。

金属や半導体中の電子は,磁場によってエネルギーが量子化される。そのこと自体は昔から知られていたが,量子化の間隔や規則性は物質によって様々に異なり,それを正確に計算することは現代においても困難だった。

ところが近年,固体における相対論効果(スピン軌道結合)が大いに注目を集め,活発に研究されるようになるにつれ,従来理論では全く対応できない問題が顕在化してきた。それを解決するために,磁場中量子化エネルギーの厳密な計算手法が求められていた。

今回研究グループは,一見全く関係のない「行列力学」の理論手法が,磁場による量子化の計算に転用できることを発見し,これを元に量子化エネルギーを厳密に計算できる手法を開発することに成功した。

さらにこの手法を用いて相対論効果の常識を覆す現象を発見し,熱電効果や超伝導など様々な分野から注目を集める,半導体PbTeにおける相対論効果の問題を解決することにも成功した。

今回開発された理論手法は,様々な物質に応用可能で,特に半導体や半金属䛾分野で問題となっている相対論効果䛾理解を深める,非常に有力な手がかりを与えることができるという。

それだけにとどまらず,この成果は強磁場量子状態を正確に予測できることから,強磁場量子物理学の未踏領域研究を強力に推進させることが期待されるとしている。

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