京都大学の研究グループは,ハトがヒトと異なる方法で外界の視覚的な動きを処理することを発見した(ニュースリリース)。
霊長類と同様に発達した視覚系を持つ鳥類では,単純な直線運動だけではなく,複雑な3次元的運動なども区別できる。一方で,そうした区別の根底にある運動情報の処理過程について鳥類種はほとんど検討されていなかった。
ヒトの運動処理の特性を検討するために,異なる視野位置の運動情報や,異なる方向の運動情報をどのように統合するか調べる刺激として,Barber pole刺激やplaid刺激が用いられてきた。
Baber pole刺激は床屋の回転錯視とも呼ばれ,楕円の窓の中を斜めの縞刺激が動くとき,縞がその垂直方向にまっすぐ動くのではなく,楕円の長軸方向に斜め方向に動いて見える。plaid刺激は異なる方向の縞を重ねたもので,それぞれの運動ベクトルの終点を通る垂線の交点方向(IOC)に運動が知覚されることが知られている。
今回の研究では,コンピュータ画面に映る刺激の運動方向を答えるようハトに訓練し,Barber pole刺激とplaid刺激に対してヒトが知覚する方向と同じ方向に反応するか調べた。
5個体のハトに対し,タッチパネルに映る運動刺激の方向を答える訓練を行なった。訓練段階では同じ方向に動く無数のドットを画面中央に映し,その周囲を囲むように反応キーを円状に配置した。ハトはドットの進行方向上にある反応キーをつつくことにより報酬のエサを獲得した。
ハトがドットに対して正しい方向に反応するのを確認した後,画面にBarber pole刺激,もしくはplaid刺激を移し,ハトがどの方向のキーに反応するか分析した。
分析の結果,ハトは両刺激に対し,ヒトの知覚方向とは異なる方向に反応することがわかった。Barber pole刺激に対し,楕円の長軸方向ではなく,縞の垂直方向に反応した。plaid刺激に対してはIOCではなく2つの縞の平均方向に反応した。
今回の実験の結果,同一の運動刺激を見た場合でもハトとヒトでは違う方向に見えることがわかった。これは,脳内で視覚的な動きを処理する方法が両種で異なるためだと考えられるという。
研究グループは,他の鳥類や哺乳類で同様の実験を行なうことで,どのような進化的系統に位置し,どのような環境に暮らす種が,ヒト型あるいはハト型の見え方をするのか明らかにするとしている。