ニコンは,レーザーアブレーションを用いて材質の表面を除去しながら精密加工を施す「精密除去加工機」の製品化を目指し,試作機を開発している。
この製品は,加工用短パルスレーザーと干渉計を組み合わせており,レーザーアブレーションによって材料表面をわずかに削り取り,計測をしてさらに加工を繰り返すことで,サブμmの精度で任意の深さまで加工を施すことができる。
例えば5cm角のSUSの板材は,そのままだと最大で200μm程度の反りがあり,用途によっては十分な平面とは言い難い。しかし,この装置を使って凸部を削り取ることで平面度1μm以下を実現できるという。
また,レーザーによる非接触加工なので,機械加工では難しい高低差があるピンが多数密集するような微細構造の作成や,レンズホルダーのように多数の細い支柱によって支えられているため,力をかけると変形してしまうような部分の平面加工も得意とする。
そのため,大枠の加工を切削加工や放電加工で行ない,仕上げとしてこの精密除去加工を行なうような使い方が適しているのではと同社はしている。
アブレーション加工を行なうレーザー加工機はこれまでもあったが,精密な計測装置と組み合わせたのがこの装置の最大の特長。これにより,サイズの大きなワークでも装置の精度に影響されることなく,離れた位置の正確な加工が可能となる。
また,精密なワークの形状測定も行なうため,ワークの固定が不要。加工後はワークの断面を確認して,さらに追い込みをかけることもできる。また,非熱加工のため,加工後のワークをすぐに取り出せるといった利点もある。
同社では半導体露光装置で培ってきた位置決め技術やレーザー加工技術を用いて工作機械市場へ進出を試みており,今年には金属3Dプリンターの複合機の発売を開始している。今回の装置も,レンズの測定技術などの社内の技術を活用しているという。
現在,製品化に向けた情報とデータの収集を行なっている段階で,具体的な仕様等はまだ決まっていないという。使用するレーザーもナノ秒~フェムト秒,波長も紫外~赤外まで試しており,最適化を進めている。素材も,SUS以外にもガラスやセラミックなど,広く対応したい考えだ。
まだ具体的な発売時期等は決まっていないというが,同社では展示会などを通じてニーズを広く拾い,製品化を進めていきたいとしている。