理研,単結晶Si基板のレーザー加工速度を23倍向上

理化学研究所(理研)は,フェムト秒レーザー加工において,ギガヘルツの超高繰り返しフェムト秒レーザーパルス列(GHzバーストモード)を用いることで,単結晶シリコン基板を高速にアブレーションする新手法を開発した(ニュースリリース)。

従来のレーザー加工では,加工速度を速めるためにレーザーパワー密度を大きくすると,過剰なエネルギー集中や試料と空気との界面における空気のイオン化により,加工品質が大きく低下するといった問題があった。

これに対し研究グループは,まず周波数4.88GHzで繰り返された2~20個のフェムト秒レーザーパルス列から成る「GHzバーストパルス」を生成し,これを64MHzの繰り返し周波数の「BiBurst(バイバースト)モード」で発振させ,大気中の単結晶シリコン基板へ照射し,アブレーション加工を行なった。

従来の単一のフェムト秒レーザーパルスを照射するシングルパルスモードでは,ある臨界値以上のパルスエネルギーで加工を行なった場合,レーザーによる熱損傷および空気のイオン化による損傷により加工面に許容できない損傷が生じたが,BiBurstモードではこうした現象による損傷が起こらず,シリコンの高品質加工が可能と分かった。

これは,BiBurstモードのGHzバーストパルスが複数個のフェムト秒レーザーパルス(イントラパルス列)で形成されており,全投入エネルギーが各イントラパルスに分割されて,イントラパルスのエネルギーが臨界値よりはるかに小さくなるかため。

続いて,BiBurstモードにおける異なる条件でシリコン基板のアブレーション加工を行ない,加工痕の除去体積と全投入エネルギーの関係を評価した。

その結果,BiBurstモードでの加工痕の除去体積は,全投入エネルギーが一定の場合,イントラパルス数Pおよびバーストパルス数Nが大きくなるほど,シングルパルスモード(N=1,P=1)よりも大きくなることが分かった。さらに,シングルパルスモードでは,3.3μJ以上のエネルギーで照射すると,加工痕に許容できない損傷が生じ,除去体積を評価できなかった。

それぞれのモードにおいて,空気のイオン化が発生しない条件,すなわち高加工品質が保持される条件で得られる最大除去体積を比較したところ,BiBurstモード(N=5,P=20)ではシングルパルスモードに対して,23倍の除去体積を達成した。アブレーション加工痕の除去体積は,実際の加工における速度と同義なことから,これはBiBurstモードにより加工速度が23倍向上することを意味する。

研究グループはこの成果について,高品質加工を維持したまま,高い加工速度を提供できる新しいレーザー加工法としての応用が期待できるとしている。

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