神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC),分光科学研究所(SSL),東京大学は,最先端のラマン分光技術を駆使した次世代ラマン分子計量計「CRamol-532」を開発した(ニュースリリース)。
この製品は,従来のラマン分光計とは異なり,スペクトルデータだけではなく,その解析によって得られる分子計量データ(種類,濃度,空間分布など)も出力する。高速に試料上の多点のスペクトルを計測する機能を備えており(10秒間に1000点の計測が可能),不均一な試料をグローバルに解析することができるという。
スペクトルデータの解析には,SSLが独自に開発した解析ソフトウェア「HAMAND」(Hypothetical Addition Multivariate Analysis with Numerical Differentiation)および「MCR-ALS」(Multivariate Curve Resolution with Alternate Least Squares)が用いられ,試料に含まれる分子の種類,濃度や空間分布を自動的にリアルタイムで算出する。
励起波長や測定波数範囲の設定,サンプリング光学系の設計などで装置をカスタマイズしたり,標的分子に応じてHAMANDあるいはMCR-ALS解析パラメーターをカスタマイズすることにより,「機能性食品中のビタミン類の定量測定」「水の構造解析」「布に付着した精液の検出」「尿中の尿素やクレアチニン,血液中のブドウ糖濃度決定」など,顧客のニーズに応じた製品とすることが可能。
この製品は,スペクトルを解析する専門家を必要とせず,工場,病院,検査場などの現場での日常的応用に適している。なお,この製品の第1号機は,2019年3月に国内の医療系の公的研究機関に納入されている。