沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究グループは,2つの金の電極間に接合された単一分子を通る熱伝達の測定と理論化に成功した(ニュースリリース)。
単一分子を流れる電子や分子がどのように発光するかなど,分子のその他の特性についてこれまで研究されているが,熱輸送や伝導性を分子のレベルで定量化するには,高い分解能の測定が必要とされるため,これまで未解明となっていた。
今回研究グループは,1個の炭化水素分子を金でコーティングされたプローブと金の表面の間に配置することができる走査型熱顕微鏡を開発した。まず金のプローブを熱し,その後,分子がプローブの先と基板の層との間で結合を形成するようプローブを低温の金の基板の上に掲げた。温度差により,熱は分子を通じて高温の金プローブから低温の金基板に伝導し,炭化水素分子を合成した。
各測定にかかる時間はわずか数秒だが,分子1個の熱伝導率を決定するには何度も顕微鏡実験を重ねて平均を出す。研究グループは,長さの異なる炭化水素分子を使用し,炭化水素分子中の原子の振動によって運ばれる熱を検出した。
今回の研究では,長さの異なる炭化水素分子を使用した。研究グループでは,今回の共同研究に先立ち,単一分子接合の熱伝導率の値についての予測を行なっており,この予測が今回の実験において,測定に必要な分解能に関する重要な知見を提供した。
研究グループは,分子レベルでの熱輸送は分子の長さに依存しないことがわかったため,今後は熱輸送をどのように増強または低減できるかを解明していく必要があり,また新しい分子構造を設計することによって,熱の流れを制御する方法を見つけたいとしている。