日本電気硝子は,新しいガラスを用いた赤外線用レンズの開発に成功した(ニュースリリース)。
赤外線は,赤外線カメラとして防犯やサーモグラフィに,また,センサーとして大気汚染ガスの測定や省エネのための空調制御などに使われ,近年では,自動車の夜間安全装置として暗闇での視界を映像化するナイトビジョンにも使用されている。赤外線カメラの需要が高まり,市場が拡大するなか,使われるレンズの性能と量産性の両立が望まれている。
赤外線カメラのレンズには,ゲルマニウム単結晶やカルコゲナイドガラスを材料にした赤外線専用のものが必要。しかし,ゲルマニウム単結晶は赤外線の透過特性に優れるものの,プレス成形によるレンズ作製ができないため,量産性の低さが課題となっている。
この対策として,加熱プレス成形が可能なカルコゲナイドガラスが使われはじめているが,ゲルマニウム単結晶に比べて透過特性が劣る。また,従来のカルコゲナイドガラスはヒ素やセレンといった有害物質を含むものが多く,環境負荷の点で懸念がある。
今回,同社が開発したガラスは,ゲルマニウム単結晶や従来のカルコゲナイドガラスよりも高い赤外線透過性能(波長20μmまで透過)を有し,明るく鮮明な画像を創出する。このガラスは有害物質を含まず,プレス成形によるレンズ作製が可能なため量産性に優れるという。さらに非球面レンズの作製が可能かつ屈折率が3.4(波長10μm)とガラスとしては世界最高値とし,レンズの高性能化・薄型化に貢献するとしている。
なお。同社ではこの成果を7月26日に立命館大学大阪いばらきキャンパスで開催される「赤外線アレイセンサフォーラム」にて発表するとしている。