東京理科大学は,溶液中の金属クラスターの挙動を解明する手法を開発し,溶液中での金属クラスターの挙動を明らかにした(ニュースリリース)。
ナノテクノロジーの応用範囲は,創薬,分子センサー,燃料電池など幅広く,特に医療,環境,エネルギーの分野で,研究の進展が期待されている。ナノテクノロジーの基幹材料となるナノ物質がこれまで合成された物質が溶液中でどのような挙動をとっているのか,未解明な部分が多くあった。
研究グループは,金と銀からなる合金クラスター([Au38-xAgx(SC4H9)24]0)の混合物を,2つの異なる合成方法で作成し,その違いを,逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)とエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)という2つの測定方法を組み合わせて解明した。
1つ目の合成方法は,チオラート保護金クラスター([Au38(SC4H9)24]0)にAg(I)-SC4H9錯体を決まった方法で添加することで,チオラート保護金銀38原子合金クラスター[Au38-xAgx(SC4H9)24]0を得る,比較的シンプルな方法(CMCR)。
2つ目の合成方法は,より複雑で数多くのステップを経るが,こちらの方法(CRMI)を用いても高純度のチオラート保護金銀38原子合金クラスター[Au38-xAgx(SC4H9)24]0を得ることができる。
こうして合成した2種類のチオラート保護金銀38原子合金クラスター[Au38-xAgx(SC4H9)24]0をRP-HPLCとESI-MSで測定し,化学組成や構造,時間変化のデータを得て比較した。その結果,金属クラスターの一種,チオラート保護金銀合金クラスターは,その合成方法によって,溶液中での時間経過による安定性や構造が異なることが判明したという。
研究グループは今回の研究により,溶液中の金属クラスターの状態を詳細に知ることの重要性が明らかになったとし,今後のナノ物質の精密な合成など,ナノテクノロジーの発展にも大きく寄与することが期待できるとしている。