中大ら,シンクロトロンで微小管の構造変化解明

中央大学,スペインALBA,スペイン高等科学研究評議会(CSIC),県立広島大学,高輝度光科学研究センターの研究グループは,2つのシンクロトロン施設,ALBAと大型放射光施設SPring-8(BL05XU,BL40XU)との研究を通して,細胞の中にある繊維,微小管の構造が繊細な制御を受けて変化する事実を発見した(ニュースリリース)。

分裂中の細胞が染色体を分けるとき,神経細胞が長い突起を伸ばすときなど,細胞が大きく変形する場面では,細胞の中にある繊維,微小管が大切なサポート構造としてはたらく。増殖が盛んなガン細胞は,この微小管がうまく構成されないと細胞分裂が進まずに死滅するので,微小管に結合する薬剤は,強力な抗ガン剤の候補にもなる。

今回の研究成果は,日本側の研究グループが開発した数10万本の微小管を一方向へ揃える流動配向技術,シンクロトロンで得られる非常に強度が高く性能の優れたX線を使う繊維回折法という構造解析技術,さらに,微小管を作るタンパク質となるチューブリンを多量に高純度で精製し,その化学反応特性を綿密に解析するスペイン側CSIC研究室の生化学技術がポイントとなる。

従来の電子顕微鏡・結晶解析などを使ったものと同等以上の精度で,しかも,真空中ではなく水溶液内の構造変化を刻々と検査できる新手法となる。この研究では,繊維構築のエネルギー源となるGTPをチューブリン分子が分解する途中過程をリン酸類似物質で停止させ,その時の構造を詳細に調べることに成功した。

構造変化がわかると,その構造により適合し結合できる薬剤を探索し,その中から少量で副作用の低い抗ガン剤の種類を選び,投与する組み合わせも工夫できるようになる。最終的には,健常な細胞は傷つけずに,ガン細胞だけを狙い撃ちできる薬剤の新処方を開発する研究へと発展できるとしている。

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