東京都市大学は,レーザードップラー振動計を用いて,世界初となる100分の1Hzの超低周波を測定できる非接触測定技術を開発し,この技術を搭載した測定器を併せて開発した(ニュースリリース)。
風力発電等の大型機械が稼働する地域では,かねてから超低周波(20Hz以下)の関与が疑われる健康被害の訴えが寄せられている。
風力発電の健康被害への因果関係を明らかにするためには,大型機械で起こる微弱な超低周波振動の検出が必要となる。現在,広く使われている電気的な振動検出法では,測定部位に電気素子を取り付ける必要があるが,広域の測定には不向きで,素子の接触による振動の変化も懸念される。
今回,研究グループが用いたレーザードップラー振動計測法は,測定部位にレーザー光を照射することで,測定部位の運動を評価することができるため,非接触で広域の測定に適している。
開発した技術は,研究グループのオリジナルの実験手法である「自己光混合効果」を基盤としている。自己光混合効果とは,測定部位から発生した反射光をレーザー光源内部に帰還させ,このとき発振光と反射光がレーザー光源内で干渉することで,発振光の強度が変化する。この変化の解析から、測定対象の運動状態を非接触で評価できる。
計測感度が光源に用いるレーザーの材質や形状等の特性によって決定されるため,その改良を重ねることで計測システムの高感度化を達成した。今回,10Hz~10mHzの超低周波振動を測定できた。
この装置は縦70cm×横70cm×高さ20cmとコンパクトで2kgと比較的軽く,持ち運びできるため,超低周波が発生すると思われるさまざまな場所で,音波の発信源の周波数や運動の状態を測定できるという。研究グループは,この装置を医学関係者と組んで健康被害の原因解明に利用するなど,多方面での実用化を目指すとしている。