NTT,光ファイバ伝送路の状態を測定器なしで可視化

日本電信電話(NTT)は,光ファイバ伝送路の状態を測定器なしでエンドツーエンドに可視化する技術を開発し,商用環境を模擬した北米フィールド網にて世界初,世界最高精度の実証に成功した(ニュースリリース)。

光ネットワークのデジタルツインは,サイバー空間上に再現された仮想的な光ネットワークであり,その光伝送性能を分析/予測することで,現実の光ネットワークのデータ伝送容量の最大化や,障害予知などが迅速に実施可能になる。

ただし,デジタルツインの実現には2つの課題がある。1つ目は,現実のネットワークの状態を精緻に再現するには,多数の専用測定器を用いた全拠点での測定が必要となるため,測定に時間とコストがかかること。

ネットワーク異常が発生した場合には高度なスキルを持った作業者が光時間領域反射計(OTDR)などの専用測定器を用いて現地測定を行なわざるを得ない場合もある。

2つ目はIOWN APNのように遠隔のユーザー拠点間を光のまま接続する場合,光ファイバ伝送路の監視範囲をユーザー拠点にまで拡大する必要があること。このような複数組織にまたがる光ネットワークにおいては,セキュリティ上,管轄外のネットワークの状態(光信号パワーなど)へのアクセスが困難になる。

そこで同社は,光ネットワークの端点に設置されている光トランシーバに到達する光信号のみから,光ファイバ伝送路のエンドツーエンドの光信号パワーを,専用測定器を用いずにわずか数分で可視化するDLM(Digital Longitudinal Monitoring)技術の開発に成功した。

この技術は,光トランシーバに到達する受信信号波形に高度なデジタル信号処理を施すことで,光ファイバ伝送路の長手方向に分布する光パワーを可視化する。

具体的には,光信号が光ファイバ中を伝搬する様子が非線形シュレディンガー方程式に従うことに着目し,光パワーを可視化する問題を逆問題として数学的に定式化し,解の導出に成功した。

また,光信号パワーの可視化を距離方向だけでなく,時間,周波数,偏波方向にまで拡張した4次元光パワー可視化技術の開発し,米デューク大学,NEC Laboratories Americaと,商用環境を模擬した北米フィールド網にて世界初,世界最高精度の実証に成功した。

これらの成果は,光ネットワークの構築に必要な光ファイバ伝送路状態の測定が,測定器を用いず光トランシーバのみで実施可能になることを示している。

同社は,この技術により,IOWN APNをはじめとした光ネットワークにおいて,迅速な光接続の確立/保守の実現が期待されるとしている。

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