東北大学は,浜松ホトニクスと協力し,分光技術に基づく新たな半導体ウエハーの検査技術を開発した(ニュースリリース)。
LEDや半導体レーザー,太陽電池などの半導体デバイスの普及には,大型ウエハーを用いた量産化が必要。高性能な電子デバイスや光デバイスの製造に適する材料の1つの窒化ガリウム(GaN)の場合,直径6インチ(約152mm)以上の円形状ウエハーが望まれている。このような大型GaNウエハーの品質管理には,ウエハー全面を高速かつ高感度にて検査ができる評価手法が必須となる。
GaNは直接遷移型半導体と呼ばれ,外部から励起を受けると特有の光を放出する。このとき,結晶欠陥の少ない結晶ほど強く発光するため,発光量もしくは発光効率を指標とすることによって結晶の品質管理が可能となる。光計測は一般に瞬時かつ感度が高いという利点があるが,一方で計測者の技量によってその強度が簡単に揺らぐため,再現性に乏しいことが知られている。
このため研究グループは,積分球内に試料を配置(2π配置)して,結晶から放出された光を全方位に渡って集めることで発光量や効率を絶対測定する方法に着目し,評価技術の改善に取り組んできた。しかしこの方法では,積分球よりも大きな結晶の評価が難しい。
そこで研究グループは,全方位フォトルミネセンス(ODPL)法において新しく積分球の外側に試料を配置(φ配置)し,積分球に空けたごく小さな穴(ピンホール)を介して試料の発光を測定する手法を考案した。
通常,積分球の外に結晶がある場合,すべての光を検出することができないが,ある光のエネルギー(この場合は3.31電子ボルト)よりも大きなエネルギー領域に限定すると,2π配置とφ配置によって得られる光のスペクトルや強度がほぼ完全に一致することを見いだした。
3.31電子ボルトは結晶の基礎吸収端エネルギーと呼ばれ,このエネルギーより大きなエネルギーの光は結晶に完全に吸収される性質がある(結晶の厚みが十分大きな場合)。したがって,基礎吸収端エネルギーより大きなエネルギーの光は,結晶の上方向にしか放出されず,結晶が積分球の外にあっても,すべての光がピンホールを経由して積分球にて検出されるという。
φ配置のこの方法は,試料の大きさへの制限がないため,例えばウエハーを自動ステージにて少しずつ移動させ,ウエハー面内の各点において発光量や効率を計測することにより,欠陥濃度の大小関係を非破壊・非接触にてウエハー全面を検査することが可能という。
研究グループは,GaNウエハー上に作製されるパワートランジスタやLED,半導体レーザー,太陽電池など,さまざまな半導体デバイスの開発・製造を加速させるものとしている。