日本原子力研究開発機構(JAEA)と千代田テクノルは,栄製作所等と連携して,ドローンに放射線源の位置推定が可能な小型軽量コンプトンカメラを載せた遠隔放射線イメージングシステムを開発した(ニュースリリース)。
福島県内の帰還困難区域を含む屋外環境において, 福島第一原子力発電所(1F)事故に伴い環境中に飛散・沈着した放射性物質の分布を把握することは,除染作業者への情報提供や住民帰還への指標とする上でとても重要となる。
しかし,従来のサーベイメーターを用いた放射性物質分布の測定では広範囲エリアの測定に時間がかかり,足場の悪い場所では怪我等の危険も伴うために事前の処置等も必要となり,作業コストの増加が懸念される。
今回開発した技術は,地表面との距離を測るためにレーザー光を利用した測域センサー(LiDAR)を用いて作成した3次元地形モデルを利用して放射性物質分布を3次元的に可視化するもの。この手法では上空からの測定が可能となるため,広範囲を迅速にかつ安全に測定することができるという。
今般,このシステムを用いて帰還困難区域で実証試験を実施し,3次元的な放射性物質分布図を描画した。放射性物質が多く沈着している箇所を赤く示すカラーコンター(等高線)図を表示する。試験の結果,道路やあぜ道に存在するホットスポットをドローンの飛行によって遠隔で可視化できることを確認した。
今回測定を行なった約7,000m2の広範囲エリアは,草木の手入れがされておらず足元も悪かったため,サーベイメーターを用いたホットスポットの探索に関わるデータの取得にこれまで半日以上を要した。しかしこのシステムを用いることにより,30分未満という短時間で測定が完了した。
研究グループは,このシステムは,広いエリアでも短時間でモニタリングや民家や里山における局所的な汚染の検知に有効で,帰還困難区域で自治体や帰還を望まれる避難者へ情報提供に資することが期待でき,さらに,廃炉作業が進行中である1Fにおいても,ホットスポットの効率的な把握や除去,効果的な遮へいにより廃炉作業の円滑な推進に貢献できるという。
なお,このシステムは2019年度中に実用化を予定している。