九工大ら,光学顕微鏡で水中のナノシートを評価

九州工業大学と山口大学,東京農工大学は,光ピンセットの技術を用いることで,水中に分散しているニオブ酸ナノシートの形を光学顕微鏡によって評価することに世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

ナノシートは,その⾮常に薄いシート状の形状から,フレキシブルで⾼性能な半導体素⼦や透明導電体としての応⽤が期待でき,将来的には,太陽電池,蓄電池,タッチパネル,⽪膚に貼り付ける電⼦デバイス(電⼦⽪膚)の⾼機能化などにも繋がると考えられている。そのような電⼦デバイスの実現には,ナノメートルスケールでのデバイスの作り込みが重要となる。

ナノシートからなるナノメートルスケールの構造体の構築には,ナノシート⾃⾝の形状が⾮常に重要。⼀⽅で,層状化合物を剥離することで⽣み出される,コロイド中に存在する「作りたての」ナノシートの形状については,確認する⼿法がなかったため,ほとんどわかっていなかった。

今回の研究では,研究グループが独⾃に発展させてきたナノシートに対する光ピンセットの技術を⽤いて,液中に分散しているナノシート1枚を捉え回転させることで,1枚のナノシートの正確な形状を光学顕微鏡で直接観察し,これまで未解明であったナノシートの形状を評価できるようにした。

試料は,ニオブ酸ナノシートの分散液を⽤いた。ナノシートの形状の直接観察の結果,完全に平らなシートとして存在するナノシートは,試料の中の40%しかなく,残りの60%は,曲がっていたり,波打っていたり,スクロールしている形状であることがわかった。一方,層状化合物を剥離すれば平らなナノシートが⽣成するという結果が得られた。

また,ナノシートの曲がっている形状は,ブラウン運動の間や光トラッピングの間中,安定で,ナノシートの形状は,液中ではほとんど変化しないことも明らかになった。

今回の研究から,液中でナノシートを集積させれば,⾃然と複雑な構造体が形成すること,また,光ピンセット技術を⽤いて,曲がったナノシートのみを集積させれば,⾃然と多孔構造を構築し⾮常に広い表⾯積を持つ材料を得ることもできると考えられるという。

研究グループは,ナノシートは,医療から電⼦機器に⾄る広い分野の新素材への応⽤が期待されており,今後の研究の発展次第では,健康やエネルギーなど多⽅⾯で⼈類の⽣活に役⽴つと考えられるとしている。

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