矢野経済研究所は,2018年のカーボンナノチューブ(CNT)世界市場を調査し,製品セグメント別の動向,参入企業動向,将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。
これによると,2018年のCNT世界市場規模は,メーカ-出荷量ベースで前年比118.5%の2,255.8tの見込みとなる。高価格が課題であった単層CNTでは低価格化が進む傾向にあり,導電性/帯電防止塗料・コート剤や熱硬化性樹脂複合材,ガラス,アスファルト,タイヤなど幅広い用途で採用が広がった。
一方,多層CNTではリチウムイオン電池(LiB)導電助剤向けの需要が拡大しており,EV(Electric Vehicle)やPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)の生産・販売台数の伸びが著しい中国が最大の需要地となっている。
リチウムイオン電池(LiB)の正極では,導電助剤を添加することによりLiBの内部抵抗を下げている。また,LiBは充放電のサイクルの進行に伴い放電容量が減少する。この原因の一つとして活物質粒子間の接点喪失が挙げられ,導電助剤は接点の失われた活物質間をつなぐ役割も持つ。
導電助剤の添加により充放電が繰り返されても電極としての形状が保たれることにより導電パスが確保され,結果としてLiBの長寿命化につながる。導電助剤としては多層CNTのほかにカーボンブラックや黒鉛粉末などが用いられている。
2018年におけるリチウムイオン電池(LiB)導電助剤の世界市場規模(メーカー出荷量ベース)は10,000tを超える見通し。そのうち,多層CNTは15%強のシェアを占めるものと推計する。
2023年のCNTの世界市場規模は,メーカー出荷量ベースで3,931.1t,2017年から2023年までのCAGR(年平均成長率)は12.8%になると予測する。
今後,単層CNT,多層CNTのいずれにおいても,リチウムイオン電池導電助剤としての需要が牽引する。また,複合材料向けでは電子部品の搬送用トレー,自動車のフューエル(燃料供給)部品など既存の用途が中心となるが,これまでの欧米や日本に加え中国市場でCNTの採用が本格化する見通しとしている。