東レ,塗布型半導体CNTの移動度155cm2/Vsを達成

東レは,産業技術総合研究所,東京大学と共同で,半導体型単層カーボンナノチューブ(CNT)を高純度に取り出す技術に取り組み,塗布型半導体としては世界最高という移動度155cm2/Vsを達成した(ニュースリリース)。

単層CNTは,半導体型が3分の2,金属型が3分の1の混合物として合成されるが,この半導体型CNTの1本1本は,10,000cm2/Vs以上の高い移動度を有することが知られている。

一方,塗布方法で形成したCNT膜では,CNT同士の接触点に電気的抵抗が存在するため,CNT膜の移動度はCNT単体の100分の1以下に留まっていた。

同社が昨年開発した単層型CNTは,従来比長さが1.5倍,直径分布が1/2,移動度108cm2/Vsを達成していたが,直径分布が揃った単層CNTは凝集しやすく,半導体型と金属型の分離が不十分となる問題があった。

今回,研究グループは,高度に構造制御されたCNTを1本1本に解きほぐし均一に分散する技術と,半導体型CNTを高純度に取り出す技術を深化させ,狭い直径分布を保ったままCNTの半導体純度を従来比5%以上高めることに成功した。この高純度半導体型CNTと同社が保有する高性能半導体ポリマーを複合化することで,塗布型半導体としては世界最高レベルを更新する移動度155cm2/Vsを達成したという。

今回開発した塗布型半導体は,最新の有機ELディスプレーにも使用されている酸化物半導体IGZOを上回る性能であり,無線通信速度の向上や回路の低消費電力化,センサー高感度化など,塗布型デバイスの性能向上に繋がるものと考えられるとする。なお,今回の研究の一部は,NEDO「エネルギー・環境新技術先導プログラム」の委託事業の一環として実施したもの。

同社は,今後この素材を活かし,RFIDをはじめとする様々なIoTデバイスや,呼気中に含まれる微少量の有機成分を検出することによる疾病予兆検知,簡易的な環境モニタリングが可能な高感度センサーなどの分野をターゲットに一層の技術確立を目指すとしている。

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