東大ら,経鼻内視鏡手術支援ロボットを開発

東京大学は,大学・企業・病院との共同研究により,脳神経外科などにおける微細手術への適用を可能とする低侵襲手術支援ロボット「スマートアーム」を開発した(ニュースリリース)。

近年医療現場に導入されている低侵襲手術支援ロボットは,腹部を主な対象としているが,さらにさまざまな手術への普及が期待されている。ロボット術具は直径8mmのものが主に使用されるが,「スマートアーム」は新たな駆動機構により先端が屈曲する,直径3.5mmのロボット術具が搭載されており,困難な手術の中でも脳神経外科手術における経鼻内視鏡手術を主な対象として設定している。

経鼻内視鏡手術は,鼻孔から内視鏡と術具を挿入することで、開頭手術ではアプローチが難しい脳の下部にある下垂体や頭蓋底にアプローチする術式。開頭手術と比較して,傷が残らず,また脳への侵襲が低いため,術後の早期回復が可能。

しかしながら体内の狭所・深部において非常に繊細で高度な手術を行なうには,個別技術の小型化や高性能化に加えて,手術ロボットシステムとしていかに要素技術を統合するかが大きな課題だった。また,人間と同じ鼻を持つ動物がないことから,動物実験をベースにロボットの研究開発や評価を行なうことはできず,研究開発に着手することすら難しい状況だった。

今回の「スマートアーム」の研究開発は,バイオニックヒューマノイド(ヒトや実験動物の代わりとなるセンサー付きの精巧な人体モデル)の脳神経外科手術用モデル「バイオニック・ブレイン」を活用することで,脳神経外科医からのフィードバックを受けながら医工連携研究として実施した。このバイオニック・ブレインを用いることで,経鼻内視鏡手術における硬膜縫合を実現できる性能も確認した。

研究グループは,このスマートアームは手術ロボットとして世界最高水準の性能とし,この研究成果により,高度で困難な手術へのロボット手術適用の可能性が大きく広がるとしている。

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