藤医大,カプセル内視鏡の観察法と病変検出感度比較

藤田医科大学の研究グループは,大腸カプセル内視鏡検査におけるFICE機能に着目し,約5年間にわたって通常光観察とFICE観察における大腸腫瘍性病変の病変検出感度の前向き比較研究を行なった(ニュースリリース)。

大腸カプセル内視鏡の読影ソフトであるRAPIDソフトウェアには,白色光画像から病変部の分光学的情報を抽出し,微細な色の変化を強調するFICE機能が搭載されている。

小腸カプセル内視鏡におけるFICE観察は通常光観察と比較し,血管拡張,びらん・潰瘍,腫瘍などの小腸病変の視認性を向上させたと報告されている。一方で,大腸カプセル内視鏡におけるFICE観察の有用性,特に大腸腫瘍性病変に対する病変検出能に与える影響はこれまでに検討がなされていなかった。

以上のことから,研究グループは大腸カプセル内視鏡におけるFICE観察が病変検出能を向上させるか,通常光観察との前向き比較試験を行なった。

2020年4月までにCCE施行後4カ月以内に大腸内視鏡を施行した91例の内,多発ポリープ例2例を除く89例を対象とした。1例につき通常光単独読影(CCE-WL)及びFICE単独読影(CCE-FICE)をそれぞれ2名の読影者が独立して行ない,大腸内視鏡所見をゴールドスタンダードとして,CCE-WLとCCE-FICEにおける病変検出能を患者毎・病変毎に比較した。また両読影法の2検者間一致率(k値)を検討した。

患者毎の検討では,6mm以上の病変を有する患者の検出感度はCCE-WLで78%・CCE-FICEで93%であり,CCE-FICEの方が有意に高いという結果だった(P=0.0159)。

また病変別では,10mm未満の病変や表面型の病変,管状腺腫や鋸歯状腺腫/過形成ポリープといった病変において,CCE-FICEの方がCCE-WLと比較し,有意に検出感度が高いという結果だった。また全病変における検者間一致率(k値)は,CCE-WLで0.66,CCE-FICEで0.64であり,同等だった。

研究グループは,これらの成果により,大腸カプセル内視鏡におけるFICEスクリーニング読影は,従来の読影法と比較し,腫瘍径が小さな表面型腺腫や鋸歯状腺腫などの大腸がん初期病変も見落とさず,効率的に検出できる可能性があるとしている。

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