筑波大,酸素飽和度イメージング内視鏡で大腸炎評価

筑波大学の研究グループは,潰瘍性大腸炎において,酸素飽和度イメージング内視鏡検査によって計測した大腸粘膜の酸素飽和度が,症状の一つである便意切迫感および大腸炎の重症度を客観的に評価する新たな指標として有用であることを見いだした(ニュースリリース)。

潰瘍性大腸炎(UC)は,直腸から連続して炎症が広がる原因不明の大腸炎。患者は下痢,血便,そして便意切迫感治療に悩まされる。治療おいてはこれらの臨床症状をとることが初期の目標であり,その後,大腸内視鏡検査を実施して,大腸粘膜の炎症が十分にとれていることが最終的なゴールとなる。

しかし,便意切迫感については,これにより生活の質が低下する患者が多いにも関わらず,その症状を客観的に評価する方法がない。また,大腸内視鏡検査では,大腸炎の重症度をスコアを用いて評価するが,医師間のばらつきがあり,病状の客観的評価が難しくなることも問題になっている。

研究グループは,UCの炎症した大腸粘膜に生じる低酸素に着目した。炎症粘膜では,炎症細胞が大量の酸素を消費し,異常な血管の発達により粘膜への血流が低下するため,低酸素状態となる。

これまでに,内視鏡用プローブで測定した大腸粘膜の酸素飽和度(StO2)とUCの重症度との間に関連があることが報告されているが,測定に当たってプローブを大腸粘膜に接触させる必要があり,その接触点しかStO2が測定されないため,リアルタイムの情報を得ることが技術的に困難だった。

一方,酸素飽和度イメージング内視鏡は,StO2に関する空間的・時間的情報を得ることができるレーザー内視鏡であり,リアルタイムの白色光内視鏡画像とStO2イメージを同時に提供することが可能。

そこで今回,通常診療において,UC患者100例に酸素飽和度イメージング内視鏡検査を実施して,490 枚の静止画像を取得し,大腸の各部位における腸粘膜のStO2を計測した。

その結果,臨床症状,特に便意切迫感が強いほど,直腸粘膜のStO2が低くなることを発見した。また,内視鏡や顕微鏡で評価した大腸炎の重症度が高いほど,大腸粘膜のStO2が低くなることを見いだした。

便意切迫感は,下痢や血便とは異なり,直腸の炎症だけでなく,その機能低下などを含む多くの病因が関与するため,これまで,客観的に評価する方法がなかった。

研究グループは,この研究により,酸素飽和度イメージング内視鏡が,UC患者の便意切迫感を客観的に評価しうる新しい手法になるとしている。

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