京大ら,酸化ガリウムでノーマリーオフ型MOSFETを開発

京都大学と京都大発ベンチャーのFLOSFIAは共同で,新規材料によるパワーデバイスとして,コランダム構造の酸化ガリウム(Ga2O3)を用いた絶縁効果型トランジスタ(MOSFET)を開発し,ノーマリーオフ動作を実証することに世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

省エネ社会の実現に向けて,パワーデバイス(電力変換に用いる半導体デバイス)の低損失化が期待されている。中でも,酸化ガリウム(Ga2O3)その最有力候補とされてきた。Ga2O3は結晶構造の異なる5つの結晶多形が知られ,そのうちでコランダム構造(α構造)が最も物性値がよい。

研究グループは,コランダム構造のGa2O3を用いた絶縁効果型トランジスタ(MOSFET)の開発に成功した。さらに,従来は実現不可能とされてきたGa2O3デバイスにおけるノーマリーオフ動作(ゲート電圧が0Vのときに電流が流れず,電圧を上げると電流が流れること)を実証することに成功した。

この研究成果により,電力変換器の小型化は数十分の一に及ぶことがあり,また,コスト低減効果は電力変換器全体の50%に及ぶことが期待されるという。安全・安心が求められる幅広い電源領域での適用が期待され,電気自動車や小型ACアダプタの普及を後押しすることが期待できるとしている。

今回の研究成果は,FLOSFIAのコランダム構造Ga2O3パワーデバイス「GaOTM」シリーズとして量産予定で,さまざまな電力変換器への搭載を目指す。

その他関連ニュース

  • CFD,大電流パワー半導体用光プローブ電流センサー開発
    CFD,大電流パワー半導体用光プローブ電流センサー開発 2024年04月19日
  • 日清紡マイクロ,琵琶湖半導体構想に参画 2024年03月29日
  • NIMS,ダイヤモンド電界効果トランジスタを開発 2024年01月26日
  • PDSら,ノーマリ・オフ ダイヤモンドMOSFET開発 2024年01月19日
  • 名大ら,AlN系UWBG半導体で理想的なpn接合実現 
    名大ら,AlN系UWBG半導体で理想的なpn接合実現  2023年12月15日
  • 公大ら,高放熱性窒化ガリウムトランジスタを実現
    公大ら,高放熱性窒化ガリウムトランジスタを実現 2023年12月04日
  • 東大,誘電体の熱励起表面波の分光測定に成功 2023年10月31日
  • 東北大ら,結晶構造が異なるSiC同士の積層に成功 2023年09月29日