名古屋大学とファインセラミックスセンター(JFCC)は,高感度電子線ホログラフィーを用いて,GaNナノワイヤー内部のドーパント分布を観察することに成功した(ニュースリリース)。
窒化ガリウム(GaN)ナノワイヤーは,直径:1m以下と非常に小さな結晶だが,結晶中の歪みが小さく,結晶欠陥も少ないため,次世代デバイスの材料として,近年,盛んに研究が行なわれている。
GaNナノワイヤーをデバイスとして使用するには,結晶中に不純物(ドーパント)を設計どおり分布させる必要がある。ドーパントを分布させることで,p型半導体やn型半導体になり,これらを組み合わせることでデバイス構造を作製できる。結晶中のドーパント分布を高分解能で検出する方法として,透過電子顕微鏡(TEM)があるが,TEM像のコントラスト変化を読み取ることでドーパント分布をとらえるのは困難だった。
そこで,ドーパント分布に起因した電場をとらえられる電子顕微鏡法の一種である電子線ホログラフィーでの検出を試みた。しかし,検出感度と空間分解能が不十分であるため,微小な結晶であるGaNナノワイヤー中の微弱かつ微少領域に形成されている電場を検出することはできなかった。
JFCCでは,従来の電子線ホログラフィーと比較して,検出感度を3倍,空間分解能を8倍にした位相シフト電子線ホログラフィーを独自開発し,ドーパント分布の検出を試みた。その結果,TEM像ではドーパント分布を反映したコントラストの変化を確認できなかったが,位相像ではドーパント分布を反映したコントラストの濃淡がはっきりと確認できた。
さらに,研究を続けていくことで,GaNナノワイヤー中の電位分布の評価が可能になり,デバイスを評価するうえで非常に強力な解析手法になる可能性があるという。また,今回開発した技術は,他の半導体材料などへの応用も期待できるものだとしている。