阪大,AIによる高分子太陽電池の材料設計に成功

著者: sugi

大阪大学の研究グループは,次世代太陽電池として期待されている高分子太陽電池の高分子材料設計において,人工知能(AI)アルゴリズムの1つであるランダムフォレスト(RF)を用いて,性能予測・選別する手法を新たに開発した(ニュースリリース)。

高分子フラーレン太陽電池はこの10年間で,主に高分子材料の開発によって,10%を超える光電変換効率を達成した。また,フラーレン誘導体を他の低分子半導体に代えたものでは,13%程度まで向上している。しかし,混合膜に用いる高分子材料の化学構造は無限に近い組み合わせが存在する。さらに,混合膜の構造やその混合膜を用いた太陽電池の性能は予測できないため,ありとあらゆる材料を検討する方法は限界がある。

情報データ科学と材料科学が融合した分野は「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」と呼ばれるが,高分子太陽電池では化学構造など数多くの要因が素子性能に複雑に影響するため,これまでMIは有効に利用されてこなかった。そこで研究グループは,高分子太陽電池材料の選別に特化したMIの手法を開発することを試みた。

今回の高分子材料では,化学構造を1,024個の指紋キー(数字の列)に変換し,加えて分子量や電子準位などの物性値を入力パラメータとし,光電変換効率のグループ(例えば4~5%のグループなど)を出力として与えるように機械学習を行なった。グループ数を調整して検討した結果,正答率を向上させることに成功した。さらに,これまでの計算化学では不可能であった,溶解性を付与するアルキル鎖の選別も可能になった。

この分類器は,すでに学習した化学構造に対しては95%以上の正答率が得られるため,材料化学の専門家にも勝る材料選別が可能。さらに研究では,他の計算化学データベースで提供されている分子構造を分類器によって選別し,それらの素子性能を予測した。続いて研究者自身による合成上の考慮(合成ルートや入手可能な試薬)を経て1つの高分子構造を決定し,実際に合成した。

合成した高分子を,これまでに開発した高速実験スクリーニング法を用いて性能予測すると,分類器による予測に近い性能が得られた。この実験スクリーニングでは,手間のかかる素子作製をすることなく,高分子フラーレン混合膜の光電気信号を評価することで素子性能や最適素子作製条件を予測できる。このように,MIによる分類器と実験スクリーニングを融合した一連の開発手法は,世界初で実用上も有効であり,今後の高効率な高分子太陽電池の開発を加速することが期待できるという。

研究グループは今後,この分類器による材料設計手法を,高分子だけでなく低分子や3種混合系材料にも展開し,より高効率な高分子太陽電池材料を探索していきたいとしている。

キーワード:

関連記事

  • SBと理研,AI計算基盤と量子コンピュータの接続開始

    ソフトバンクと理化学研究所は,学術情報ネットワーク「SINET(サイネット)」への接続サービスを活用して,ソフトバンクのAI(人工知能)計算基盤と理研が運用する量子コンピュータの相互接続を,2025年10月に開始すると発…

    2025.10.02
  • デンソーと九工大,AI活用の外観検査システムを開発

    デンソー九州と九州工業大学は,熱交換器の製造工程における外観検査業務の効率化を目指し,AI技術を活用した外観検査システムを共同開発した(ニュースリリース)。 これまでも,デンソー九州ではAIを活用した生産プロセスの最適化…

    2025.09.03
  • 三菱電機,次世代太陽電池開発でJAXA公募に選定

    三菱電機は,宇宙航空研究開発機構(JAXA)が実施する宇宙戦略基金第一期の公募テーマの一つである「衛星サプライチェーン構築のための衛星部品・コンポーネントの開発・実証」(分野:衛星等)において,技術開発課題「国産太陽電池…

    2025.08.22
  • 北大,バンドギャップ予測可能なペロブスカイト設計

    北海道大学の研究グループは,機械学習によってバンドギャップ(光吸収の指標)を精密に予測・設計できるペロブスカイト無機材料の開発手法を確立した(ニュースリリース)。 近年,マテリアルズインフォマティクスの発展により,機械学…

    2025.08.21
  • 公大,AIと赤外線技術で牛の体温を測定

    大阪公立大学の研究グループは,赤外線サーモグラフィーと人工知能(AI)を組み合わせることで,画像から関心領域(目および鼻,特に温度変化に敏感に反応する高温領域)の位置を自動的に検出する技術を活用し,約200件の温度変化パ…

    2025.08.01
  • 神大ら,光触媒の性能を予測できる機械学習を開発

    神戸大学と奈良先端科学技術大学院大学は,太陽光と水からCO2フリー水素を製造できる光触媒の性能を,少数データから予測できる機械学習モデルを開発した(ニュースリリース)。 太陽光と水からCO2フリー水素を製造できる光触媒は…

    2025.07.09
  • 産総研,AI技術で導波路の接続状態の良否を自動判定

    産業技術総合研究所(産総研)は,ミリ波からテラヘルツ波にわたる電磁波の測定における導波路の接続状態を,機械学習を用いて自動判定する技術を開発した(ニュースリリース)。 ミリ波からテラヘルツ波にわたる高周波帯の電磁波を扱う…

    2025.06.20
  • 近畿大,AIで色素性病変のレーザー治療の実施判断

    近畿大学の研究グループは,顔面のシミの種類を人工知能(AI)で高精度に識別し,レーザー治療の実施判断を支援する診断システムを開発した(ニュースリリース)。 シミやアザに代表される顔面の色素性病変は,肝斑,雀卵斑(じゃくら…

    2025.06.12

新着ニュース

人気記事

新着記事

  • オプトキャリア