豊橋技術科学大学,分子科学研究所,米アイオワ州立大学らは,共同で磁場と光の相互作用である磁気光学効果を発現する膜を用いた,集積化可能なQスイッチレーザーのピークパワーを1キロワットまで高めた。さらに,従来不可能と考えられてきたランダム偏光(無偏光)の光に対しても磁気を使ったQスイッチが有効であることを示した(ニュースリリース)。
高出力かつ小型で丈夫なレーザーは,自動車の衝突防止センサーや,医療機器,機械加工,レーザー点火などで使われ,その活躍の場は現在急激に広がっている。
今回,研究グループは,最近開発に成功した迷路状の磁気ドメインをもつ透明磁性材料を用いた薄膜Qスイッチレーザーの高出力化に成功した。このレーザーのピークパワーは,1.1キロワットに達した。この値は,同手法を用いた従来報告されていたパワーよりも1桁大きい。
レーザーを形作る共振器(キャビティー)を,他の制御可能なQスイッチ素子では達成が難しい10mmまで縮めることで,パルス幅を短くした。同グループは,これまでも,磁気光学効果を使ったQスイッチレーザーを報告しているが,出力光の偏光状態は,直線偏光に限られていた。今回の研究で初めて,同構成のレーザーにより,ランダム偏光(無偏光)の出力光も得られることが明らかになり,これにより扱える光の状態が大幅に広がった。
さらに今回の研究結果は,ガーネット構造をもつレーザー結晶と,同じくガーネット構造をもつ透明磁性膜の組合せで実証された。これにより従来よりも,レーザー結晶と透明磁性膜の融合が遥かに容易になり,集積化の可能性を大きく高めた。
今後,レーザー結晶とQスイッチ膜の一体化が進めば,素子1つあたりの価格が大幅に安くなることが期待されるとしている。