筑波大ら,カビの成長機構を超解像度顕微鏡で解明

筑波大学と独カールスルーエ工科大学らの研究グループは,カビが伸びる仕組みを,超解像顕微鏡イメージング技術を用いて解明した(ニュースリリース)。

カビは,菌糸と呼ばれる管状の細胞を伸ばして成長する。菌糸は細胞壁に囲まれた細胞からなり,菌糸が先端を伸ばす際,先端の細胞壁を新たに合成する必要がある。

研究では,細胞壁を合成する酵素に着目し,菌糸が伸びるダイナミックな様子を超解像レベル(従来の約10倍の解像度;30㎚)で可視化した。幅が約2㎛の菌糸の先端では,約100㎚の限られた部位に細胞壁合成酵素が一時的に集中して局在し,その領域付近で部分的に細胞が伸長した。そして,そのような酵素が集中し細胞が伸長する微小部位の位置が少しずつ変化することで,細胞が徐々に伸びていることを発見した。

また,パルスチェイスイメージングにより,背景のシグナルを低下させ時間分解能を向上させたことで,細胞壁合成酵素が菌糸細胞内で高速で輸送される様子(10㎛/秒)を初めて観察することに成功した。

そして,その酵素が微小管上をキネシン-1により長距離にわたって輸送され,菌糸先端付近ではアクチンフィラメントに依存したミオシン-5により目的地に到達することを明らかにした。

カビが伸びる仕組みを理解し制御することは,醸造・発酵,抗生物質・有用酵素生産などの産業分野に貢献し,農業・医学分野における農薬・抗菌剤の開発にもつながることが期待されるとしている。

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