産業技術総合研究所(産総研)は,対象物の静電気を読み取り,画像として可視化するスキャナーを開発した(ニュースリリース)。
製造業では,製造プロセスの自動化と高度な情報技術の導入により,工場群全体の生産性・稼働効率を向上させるためのスマートマニュファクチャリングの技術開発が進められている。製造工場ではさまざまなセンサーを活用して生産にかかわる環境や状況などのデータを収集し,生産ロボット・システムが自律的に生産方法などを判断することで,製造プロセス全体を高効率化できる。
このために製造現場で不規則に発生する問題の数値化は重要となる。特に大きな生産阻害要因の一つである静電気の詳細な分布を可視化できれば,静電気問題の定量化,有効な対策や製造プロセスへのフィードバックにより静電気問題の大幅な改善が期待できる。しかし,これまで非破壊,短時間,高空間分解能で静電気分布を計ることは困難だった。
今回,静電容量型の小型アレイセンサーを開発し,高速で信号処理するシステムを構築して,2秒(15 mm/s)で,面積30mm×30mmを空間分解能1mmで静電気を可視化する装置(静電気スキャナー)を開発した。
これにより,製造現場に存在する静電気を帯びやすい絶縁材料の詳細な帯電位置を特定し,有効な静電気対策が行えると考えられる。また,詳細な静電気情報を製造プロセスにフィードバックし最適化することで,製造コストの削減,生産性向上,高性能な製品の量産化に貢献することが期待されるとしている。