DNP,ナノインプリントでDOEを量産化

著者: sugi

大日本印刷(DNP)は,静脈認証機能搭載のタブレット端末などに使用できる小型光源用として,ナノインプリント技術を応用した微細な凹凸構造によって赤外線などの照射光を整形できる回折光学素子(Diffractive Optical Element:DOE)を量産する技術を開発した(ニュースリリース)。

今回量産に成功した光学素子は,小型化に対応可能という特長を活かし,富士通のスライド式静脈認証機能搭載のタブレット端末に採用されている。

赤外線を使用したセンシングは広く使われており,赤外線を特定の形やパターンで照射することで,効率や性能を高めるほか,装置を小型化したいなどのニーズがある。このような光を整形する技術としてDOEがあり,この技術の適用で,照射する光の向きや強さ,照射パターン形状を設計・調整することが可能となる。

静脈認証などに利用する赤外線の光をコントロールするには,光学素子の凹凸を深くする必要がある。また光を整形して効率を高めるためには,適宜,凹凸パターンのピッチ(幅)を狭くしたり,階段状に加工したりする必要がある。このような深くて細い形状や階段形状を作り出すのは難易度が高く,金型加工や量産における高いナノインプリント技術が必要となる。

同社は今回これらの課題を解決し,スライド式静脈認証機能に搭載される光学素子の量産を可能にした。同社はナノインプリントの基本技術を自社で開発・保有しており,金型加工~ナノインプリント~材料設計といった各工程間の製造プロセスを最適に企画・設計することができる。また,DOEの新規開発の際,顧客企業が指定する種々の光照射パターンに対応するために必要な光学設計技術も保有する。

DNPはこれらのナノインプリント技術,光学設計技術の組み合わせで,要求特性に対する“合わせ込み”を最適に行なうことができ,レーザー光源やLEDなどの各種光源に対応したDOEの設計・製造を可能としている。

DOEは,特定の波長の光を所定の形状,分布に配光できるほか,回折パターン層が数ミクロンの厚みのため,光学素子を薄く小さくすることができる。これらの特徴により,光照射の効率化,センシングの高精度化,照射光源の小サイズ化に寄与する。これによって,以下のような用途へのDOEの展開が期待されているという。

○目の虹彩認証などの生体認証
○周囲の立体物や障害物を検知する赤外線3Dセンサー
○車や家電などを操作する際の入力装置としてのジェスチャーセンサー
○周囲のシーンに応じたインフォメーションやメッセージの投影装置 ほか

同社はこの「DNPナノインプリントソリューション」の関連商材の販売で,2021年度には年間80億円の売上を目指す。

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