大日本印刷(DNP)は,次世代の3D(3次元)構造のNAND型フラッシュメモリーの需要増加と低コスト化に対応するため,ナノインプリント用テンプレートの複製装置を3月に導入し,半導体メーカーへ回路線幅10nm台のテンプレートの供給を開始する(ニュースリリース)。
現在,スマートフォンやデータセンターのサーバーなどの市場拡大に伴い,搭載されるNAND型フラッシュメモリーの需要も急速に増加している。特にメモリーセルを垂直に配置した3D構造のメモリーは,データ容量を飛躍的に増やせるため,高機能化するスマートフォンやIoTの普及によりデータ量が急増しているデータセンター向けなどで大幅な需要増加が見込まれている。しかし,従来のフォトリソグラフィ技術による半導体製造方法では,製造装置が高価になるなど製造コストの増加が課題となっている。
この課題に対し,ナノインプリントリソグラフィ技術は,テンプレートから直接回路パターンを転写して複製するため,高価な光学系の設備を使用せず比較的安価な露光装置での製造が可能。また,製造工程も簡略化できるため,従来のフォトリソグラフィ技術による製造方法に比べ約1/3の大幅なコストダウンが期待される。
DNPは2003年より半導体向けナノインプリント用テンプレートの開発を行なっており,2009年以降は東芝やキヤノンと共同でナノインプリントリソグラフィのプロセスの開発を進めてきた。また,昨年からは,次世代半導体に向けて回路線幅10nm台の半導体向けナノインプリント用テンプレートの生産体制の構築に向けて,高解像度高速EB描画(マルチビーム描画装置)やドライエッチングなどの関連プロセス装置も含めて,総額40億円の設備増強を進めている。
今回DNPは,その最終段階として,3D構造のNAND型フラッシュメモリーの需要増加と低コスト化に対応するために,キヤノン製のナノインプリント用テンプレート複製装置を導入し,東芝への回路線幅10nm台の半導体向けの量産供給ラインを構築して供給を本格的に開始する。この量産複製装置の導入により,10nm台のナノインプリント用テンプレートを安定的にマスターテンプレートから複製,提供することで,半導体メーカーの製造プロセスの簡略化や大幅なコストダウンを支援する。
DNPは,3次元NAND型フラッシュメモリー向けナノインプリント用テンプレートの供給を開始し,2019年には年間で約100億円の売上げを目指すとしている。