トッパンフォームズ,富士フイルム,パイクリスタル等のグループは,NEDOプロジェクトにおいて印刷で製造可能な有機半導体CMOS回路の更なる高速化と集積化に成功し,電子タグ内部に格納された固有IDコードや温度センサーからの取得情報量の大幅な拡張が可能になった(ニュースリリース)。
トッパン・フォームズ,富士フイルム,大阪府立産業技術総合研究所,JNC,デンソー,田中貴金属工業,日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース,パイクリスタル,東京大学で構成されるグループで,NEDOの戦略的省エネルギー技術革新プログラム「革新的高性能有機トランジスタを用いたプラスティック電子タグの開発」を実施している。
今回,パイクリスタル,富士フイルム,東京大学のグループは,溶液を塗布し,単結晶化する「塗布単結晶化」によって作製する高移動度の有機半導体CMOS回路を開発した。有機CMOSフリップフロップ回路の高速動作において,論理演算速度は0.5MHzを超え,これまでの同グループの報告よりさらに1桁以上高いスピードを実現した。
さらにこの塗布型高速有機CMOSについて,p型層とn型層を積層することによって,従来手法からの微細化に頼らない集積化を実現するプロセスも開発した。これらの新しい技術によって,数1000個以上のトランジスタを用いる高度な集積回路を構築することができ,温度管理用電子タグとスマートデバイスとの直接通信も可能になるという。
大阪府立産業技術総合研究所のグループは,物流温度モニター用として,冷蔵・冷凍温度範囲であっても安定に動作可能なフレキシブル温度センサー構造を開発した。またパイクリスタルと共同で,世界最高の応答速度をもつ有機CMOSフリップフロップ回路を用いて,温度センサーのアナログ信号をデジタル信号に変換する多ビットA/Dコンバーターを,世界で初めて印刷でできる半導体を用いて実現した。
開発した有機半導体CMOS回路と組み合わせることによって,非接触通信可能な温度管理用電子タグが構成でき,物流管理,環境管理などの低コスト温度モニターへの利用が実現できる。
このプロジェクトでは,従来の多結晶有機半導体デバイスと比べて1/10以下のコスト,10倍以上の性能でコストパフォーマンス100倍以上を目標とする有機半導体を簡便かつ低コストに成膜し,商用周波数で通信可能な高速応答性能を持つRFIDタグの実現を目指している。