新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクト「エネルギー・環境新技術先導プログラム/ULPセンサモジュールの研究開発」における成果をもとに,産業技術総合研究所(産総研)は0.2~0.3Vの超低消費電力で駆動が期待できる新たな原理のトランジスタを用いたLSIの動作実証に成功した(ニュースリリース)。
あらゆるモノがインターネットでつながるIoT(Internet of Things)の普及に伴い,生活空間のあらゆる箇所に無数の自立電源で動作する無線センサノードが設置され,ネットワーク化されることが予想され,無線センサモジュールの超低消費電力化が重要な課題となっている。
開発した回路は,トンネル電界効果トランジスタ(トンネルFET)を用いたもの。トンネルFETは,0.2~0.3Vの超低消費電力での駆動および高い動作周波数での使用が期待されているトンネル効果を利用したトランジスタだが,N型およびP型からなる相補型LSIの形成の困難さがボトルネックとなり,動的回路動作での実証は行なわれていなかった。
今回,NEDOプロジェクトにおいて抽出された課題の一つであるトンネルFETの動的回路動作の実証を,産総研が独自に実施し,リング発振回路を用いて動的回路の動作確認に成功した。
これにより,トンネルFETを用いたLSIの性能向上を動作周波数で検証することが可能となり,実用化に向けた検討段階に入る。今後は動作速度の改善と動作電圧の低下に向けた研究開発を行ない,複雑な回路への応用や動作周波数の向上を目指すとしている。