エネルギーの将来を考える

3月半ば頃,英国大衆紙・デイリーメールのウェブ版に,効率の良い常温核融合が実現されたとの記事が出ていました。相前後して米国・コロラド州立大のホームページにも同じ内容の記事がアップされ,また本年7月になってPhotonics Spectraでもこの件が取り上げられています。重水素Dに置換されたポリエチレンのナノコラム(林立している)に1 J程度のfsレーザーパルスを照射したところD-D核融合反応が生じて超短中性子バーストが観測された,と云うものです。1 Jの入力に対して200万個の中性子が発生したとのことで,平板型ターゲットの場合に比べナノコラム型とすることで500倍の発生効率が得られたそうです。

照射エネルギーをさらに増大することで重水素のエネルギーはより大きくできて,D-D反応もさらに高められる可能性があると書かれています。また,この報告の様な小型装置でも,超高速中性子分光や,D-D反応のより詳しい理解に役立つだろうとのことです。常温核融合は,1989年,英国と米国の研究者が,特殊な電極を用いて重水中に電流を流すと過剰に発熱し,核融合が起こった可能性があると発表したことに端を発しています。残念ながら再現性がほとんどなく,長らく似非科学とも見なされていました。しかし我が国を含め幾つかのグループが粘り強く研究を継続し,ここ数年,再び報道に取り上げられるなど,注目を集め始めています。

この続きをお読みになりたい方は
読者の方はログインしてください。読者でない方はこちらのフォームから登録を行ってください。

ログインフォーム
 ログイン状態を保持する  

    新規読者登録フォーム

    同じカテゴリの連載記事

    • 「農政の歪み」に改革を 井筒 雅之 2024年12月10日
    • 大きな政府か,小さな政府か 井筒 雅之 2024年11月10日
    • “大地震予知”につながる電離層観測への期待 井筒 雅之 2024年10月09日
    • 求められる「再生可能エネルギー」 井筒 雅之 2024年09月11日
    • AIの活用とサイバーセキュリティ 井筒 雅之 2024年08月12日
    • 来るべき「スパース社会」に歯止めをかける方策とは 井筒 雅之 2024年07月10日
    • 日本の未来に立ちはだかるエネルギー問題 井筒 雅之 2024年06月11日
    • 光業界に求む,チャレンジ精神 井筒 雅之 2024年05月10日