Photonics Spectraの本年1月号に,17世紀に描かれた絵画(サッソフェラートによる祈りのマドンナ)に THz波パルスを照射して計測する研究が紹介されています。反射波の波形から,描かれた絵画の下に隠された下絵を見つけたり,劣化の進み始めている場所を特定するなどが可能になります。古い絵画や文化財の調査にTHz波を利用する試みは,10年近く前に我が国の研究者によって始められたものだと思います。数年前には奈良県明日香村の高松塚古墳やキトラ古墳の壁画調査に用いられたことで報道にもかなり取り上げられました。
同様な手法は自動車などの塗装状態検査やセラミックなどの内部クラック探傷などへの利用も試みられています。2003年,スペースシャトル・コロンビアが大気圏再突入時に空中分解する惨事がありましたが,耐熱タイルの一部が破損していたことが原因でした。その後,軌道上で耐熱タイルの状態を検査するのに,真空中では密着性の点で超音波の使用が難しいので,THz波が利用できないか検討されていたようです。が,結局,技術が完成する前にスペースシャトルは退役してしまいました。
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