魔鏡魔境

ふと目にしたチラシに,鎌倉歴史文化交流館というところで行われている「和鏡~水鏡から魔鏡まで」という企画展の案内が出ていた。土曜日限定で専門家による魔鏡のデモがあるという。これは見逃す訳にはいかないと,僕は愛車のスーパーカブ110ccを駆って土曜の湘南の渋滞をすり抜けて鎌倉を訪れたのである。

企画展では,鉢に水をはった水鏡,大陸から伝わった前漢時代の銅鏡に続き,それが日本独自の様式にアレンジされて平安時代に確立された「和鏡」,そしてそれが信仰対象から実用品へと変遷し,江戸時代に至るまでの歴史が見られる配置となっていて,その最後のコーナーに魔鏡が展示されていた。

魔鏡というのは,一見ただの鏡なのだが,太陽光などの光を反射投影すると,反射光の中に肉眼では見えなかった像が出現するというものだ。「魔鏡」という言葉からは,なんだか呪いにかけられているような,どちらかと言えば「闇のもの」という印象を受ける。

実際,「魔」というのは仏教の「マーラ:修行を妨げるもの」が語源であり,人を殺したり善行を妨げる悪いものという意味として使われる言葉なのだ。しかし,実際に魔鏡で出現させていたものは,阿弥陀様だとかマリア様だとかのありがたい姿であって,敬虔な祈りの対象に使われていたらしい。だったら「霊鏡」とか「仏鏡」とか「神鏡」とか,もっとありがたそうな名前にしておけばよかったのにと思ってしまう。

この続きをお読みになりたい方は
読者の方はログインしてください。読者でない方はこちらのフォームから登録を行ってください。

ログインフォーム
 ログイン状態を保持する  

    新規読者登録フォーム

    同じカテゴリの連載記事

    • 陶器肌になりたいか? 納谷ラボ代表 納谷昌之(なや まさゆき) 2023年09月11日
    • 湖は本当に鏡になったのか 納谷ラボ代表 納谷昌之(なや まさゆき) 2023年08月10日
    • 街灯の影の異変 納谷ラボ代表 納谷昌之(なや まさゆき) 2023年08月10日
    • 五色の亀に連れられて─妄想浦島─ 納谷ラボ代表 納谷昌之(なや まさゆき) 2023年06月05日
    • 花粉光環の品位 納谷ラボ代表 納谷昌之(なや まさゆき) 2023年05月08日
    • メコンの余韻 納谷ラボ代表 納谷昌之(なや まさゆき) 2023年04月24日
    • 遠赤外線の効能 納谷ラボ代表 納谷昌之(なや まさゆき) 2023年03月20日
    • 惹かれ合う影 納谷ラボ代表 納谷昌之(なや まさゆき) 2023年02月13日