X線を越えるもの

幼稚園の頃,体が小さくて馬鹿にされたのを見返すために木から飛び降りたら,着地の時に手をついて右肘を脱臼した。脱臼と言っても関節が変形してしまうほどの重症で,外科でギブスをはめられた後,夏の間,僕はプロ野球選手も通っていたという整骨院で治療を受けた。僕がどんなに泣き叫けぼうと,ぐいぐいと治療が続けられ,そのおかげで完治したのだが,大きくなって母から聞いた話では,最初に行った整形外科では,おそらく肘の関節が曲がったままになってしまうだろうと言われたらしい。そういえば病院でX線写真を見ながら母が泣いていた記憶がある。

時は過ぎ,大学院の1年の冬も終わりの頃。スキーをしていたら横から知らないおばさんが突っ込んできて,ぼくの足を蟹挟みにしながら転倒し,僕は右膝内側靭帯を断裂してしまった。この時は足を伸ばしたままギブスで固められ,春休みの50日間を病院で過ごすはめになった。学生なので友人たちが見舞いに来てくれては僕のギブスにいたずら書きをしていく。恥ずかしいけど何だか嬉しい気分でもあった。そして,今回,運動中に転んで手をついたら指の腱が切れてしまった。ギブスで8週間固められ,随分と不便な日々であった。それにしても生まれてから3回もギブスをはめるなんて,おそらく平均的ギブス装着率を大きく上回っていると思うのだが,そんなことは自慢にもならない。

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